マイニングの中央集権化とそれがもたらすリスクは非常に長い間議論の対象になっています。現在の理解をまとめると、マイナーが自由にマイニングプールを切り替えることができる限りはビットコインに対する影響力は限られていますが、マイニングプール同士の競争によって囲い込みのインセンティブが存在するため今後も切り替える選択が容易であり続けるとは限りません。
特に、特定のマイニングプールの収益性が群を抜いて高い場合は多少問題があってもマイナーにとってはそこにハッシュレートを売却し続ける動機があります。MEVというマイニングの副収入によってマイニングプールの中央集権化が進む可能性については最近の記事で取り上げました。
MEVはビットコインの脅威になりうるか?
この頃ビットコイン開発者の間ではドライブチェーンと呼ばれる技術の話題が(悪い意味で?)盛り上がっています。というのも、昔からドライブチェーン推しだった人たちが急に「ドライブチェーンを使えるようにするソフトフォークをしよう!」とSNSで積極的に主張しだしたためです。 これに対して技術的な中身をあまり把握せずに反論してボロが出てしまう開発者がいたり、支持者も反対者も不誠実なレトリックを応酬したりと泥沼化しています。ビットコインにおいて大きな変更を積極的に押し出していくのは反発を招きやすく、Jeremy Rubin氏のOP_CTVなども似たような議論が巻き起こり結局実現しませんでした。(その後、技…
ところがThe Atlanta Bitcoin Conference (tabconf)というビットコインの技術についてのカンファレンスで開催されたハッカソンで発表された"UTXO Dealership"というコンセプトはこの性質を逆手に取って大手マイニングプールの優位を崩す可能性があるアイデアで、非常に面白いものでした。
ビットコインユーザーがプライバシーをマイナーから「購入」することができるUTXO Dealershipはどのようにマイニングを変える可能性があるのか解説します。
・マイニングプールにKYC必須化とコンプライアンス重視の流れがある
・UTXO Dealershipは取引履歴で色の付いたUTXOと、マイナーが得る採掘報酬から生まれる新しいUTXOをオフチェーンで交換するプライバシー購入スキーム
・プライバシー機能を提供するマイニングプールに追加収益をもたらす
・規制対応した大手プール数社 vs 規制外の匿名プール数社、どちらが好ましい?