マイニングの話題になると、少なくともここ数年は規制や検閲という部分に関する関心が高まっている実感があります。マイナーがマイニングプールに接続する現状ではプール側が検閲を行えるのではないか、いくつかの大手マイニングプールが検閲を行うと実質的にネットワーク全体が検閲をしているのと同じ状況にならないか、といった疑問です。
ビットコインの検閲耐性はマイニングプール間、マイナー間の競争によってこれまで守られてきました。経済合理性を欠く検閲行為は検閲をしないマイナーへの報酬増加に繋がり、マイナーは検閲を行わないプールへと移動することが予想できます。これ自体はかなり強力な理屈で、ビットコインにおけるProof of Workのイノベーションの1つです。
他方、マイニングプールが大きな影響力を持っていることを認識し、その影響力の根源であるブロックテンプレートの作成を個別のマイナーも行えるようにしようという発想もあります。時折話題に上がるStratum V2プロトコルにそのような機能が盛り込まれています。
果たしてStratum V2プロトコルはマイニングプールの影響力を押さえることができるのか、それともその部分は誇大広告なのでしょうか。
Stratum V2のサイトはこちら。
マイナーとマイニングプールの関係
ビットコインのマイニングについて考えるとき、マイナーとマイニングプールの関係を押さえることは非常に重要です。なぜなら今日においてプールを利用しないマイニングは非常に珍しく、またそれぞれが異なる役割を分担する事業であるためです。
「マイナー」とはASICなどの専用機材と電力を用意してマイニングという言葉から連想されるハッシング競争を行う主体とすると、「プール」は複数のマイナーが協力して収益を安定化させる組合のようなものです。一般的にブロックの生成を行っているのはマイニングプールであり、マイナーは自己の判断でマイニングプールを切り替えることができます。
一般的には地理的に近い(通信の遅延が少ない)接続先サーバーを用意しているプールに接続しますが、ASICのファームウェア最適化など付加価値を提供しているプールも選べます。
大手のマイニングプール2~3社でビットコインのハッシュレートの過半数が取れてしまう!という話題が定期的に上りますが、マイニングプールが悪意ある行動や経済合理性のない行動を取るとマイナーの信用を失ってしまい、マイナーが離脱するという結末が見えているためか現時点ではマイニングプールによる攻撃例はありません。
ビットコインはその規模の大きさからも51%攻撃で儲けるのが難しい通貨でもあります。
したがって、マイナーとマイニングプールは主従関係というよりはビジネスパートナーであり、マイニングプール間にも競争原理が働いています。このことからこれまでプールに起因する大きな問題は起こってきませんでしたが、昨今は競争原理よりも強力な主体からの圧力が高まってきています。そう、アメリカを始めとする各国政府や国際機関による金融規制です。
Stratum V2の使い道
ビットコインは通貨である以上、送金手段でもある必要があります。もしも大手のマイニングプールに圧力がかかって自由に送金できなくなったら問題です。
そこでStratum V2はマイニングプールがマイナーに採掘させるブロックの内容を検閲することができてしまう問題への対策として頻繁に取り上げられますが、実はそれ以外にも現行のStratum V1プロトコルを改善する部分も多数あります。