ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、世界情勢が大きく変動し始めた感があります。
自分の中では、モスクワに行った記憶やら当該周辺国の先生方との国際会議での様子が思い返され、なんだか切ない状況になったな、と田中さんと飲んだりする週末でした。
さて、暗号資産周りでも様々な反応、行動が起きています。
本コラムでは、原稿執筆時点(2022年3月8日)におけるこの辺の状況を整理します。
大変大きな事件であり、影響も多岐に渡ります。そのため、本記事では下記に絞って状況整理する方針とします。
- ウクライナからのロシアユーザーアカウント停止要請に伴う暗号資産取引所の反応
- 暗号資産と経済制裁
- マイニング事業への影響
暗号資産取引所の動向
2/27頃、ウクライナのデジタルトランスフォーメーション省は、いくつかの取引所に対しロシアユーザーのアカウント停止を求める公文書を送付したとのことです。
https://www.coindeskjapan.com/141635/
上記Coindesk記事によると送付先は、Coinbase、Binance、Huobi、KuCoin、Bybit、Gate.io、Whitebit、Kunaといった取引所とのこと。
こうした状況に対し、いくつかの取引所は対応方針を説明しました。
以下、私たちと関わりの深い取引所に関して反応を抜粋します。
Coinbase
- 3/4米国籍企業は法律を守る必要があり、米政府の意向には従う。ただし、率先してロシア人全員の利用を禁止にするといったことはしない。法律で定められていない限り、誰もが基本的な金融サービスを利用できるべきだ、といったことをCEOブライアン・アームストロングがTwitterに9連のスレッドとして投稿。
https://twitter.com/brian.../status/1499621509651787782...
- 3/7 違法な活動に従事していると考えられるロシアの個人・団体に関連するアドレス25,000件以上をブロックしたと発表。ただし、ウクライナ侵攻時期に限った話ではなく、多くは侵攻以前に特定。独自調査により特定したこれらのアドレス情報は政府と共有しているとのこと。
https://blog.coinbase.com/using-crypto-tech-to-promote...
Binance
- ロシア人ユーザーをプラットフォームから一方的に排除する予定はない。しかし我々は、無関係なユーザーへの影響を最小限に抑えながら、制裁措置を受けているものに対して確実に対応するために必要な措置を取っている。国際社会が制裁措置をさらに強化した場合、我々も積極的に対応する(Coindeskの取材に対するコメント)
https://www.coindeskjapan.com/141635/
Kraken
- 2/27 法的な要求がない限り、ロシア人ユーザーのアカウントを凍結することはない、とCEO ジェシー・パウエルがTwitterに6連のスレッドとして投稿
https://twitter.com/jespow/status/1498112741684363265...
基本的にはどの取引所も1つの国全体を排除するといった行動にはでていません。
リバタリアン的価値観を体現するもの(ジェシー・パウエルKraken CEO)として遵法の範囲内で要請には応じない、とするスタンスですね。
このスタンスは、現在進行形で起きている他の分野での制裁措置と比較すると異質です。
例えば、SWIFT国際送金、Apple Pay、Google Pay、ビザー、マスターカード、PayPalといった金融サービスがロシアでの提供を制限したほか、マイクロソフト、アドビといった大手ソフトウェア企業、Netflixといったエンターテイメント企業、その他たくさんの民間企業がロシアでの事業停止を表明しています。
ビットコイン誕生の本質からすると、暗号資産取引所の存在は中央的で問題視される嫌いもあります。
ですが、こうした取引所を創業した面々は元々はビットコインに魅せられた人であったりもします。
こうした背景が対応の温度感として現れているのかも知れませんね。
暗号資産と経済制裁
ロシアにおいて、経済制裁の回避に暗号資産が使われるのでは、という指摘を見聞きします。この辺について、Chainalysisのデータを用いた分析をBloombergが記事にしています。