2020年10月15日 4 min read

Perpetual One-Way Pegによるサイドチェーン

Perpetual One-Way Pegによるサイドチェーン
Photo by Baron Alloway / Unsplash

ビットコインのスケーリングの手段の一つとしてサイドチェーンがあります。サイドチェーンを利用することで、実質的にビットコインのブロックスペースを増加させることの他に、ビットコイン本体の制限にとらわれない様々な機能を搭載することができます。現在一番成功しているサイドチェーンはBlockstream社が開発・運営するLiquid Networkで、トークンの発行や内容を秘匿した送金ができるほか、Two-Way PegというシステムによってオンチェーンのBTCとLiquid上のL-BTCを双方向に交換することができます。しかし、BTCの保管方法としてLiquidフェデレーション(企業連盟)とBlockstreamによるマルチシグに依存している設計に不信感を抱く人もいます。このようなマルチシグによる保管であるフェデレーション型のサイドチェーンの他に、ペグアウト(サイドチェーン上のトークンをオンチェーンのBTCに戻すこと)ができない方式もあります。その1つである、Ruben Somsenが提案する「Perpetual One-Way Pegによるサイドチェーン」が最近紹介したイーサリアム上のRollupとの共通点も少しある興味深いアイデアだったので、紹介させていただきます。

PERPETUAL ONE-WAY PEGの意味

まず、Perpetual One-Way Pegという表現を分解していきます。One-Way Pegというのは、Liquid Networkのようにサイドチェーン上のビットコインをオンチェーンのBTCに戻すことができるTwo-Way Pegという仕組みに対して、ビットコインをサイドチェーンに移すことはできるが、戻すことはできない仕組みのことです。

例えば、カウンターパーティーを使ってトークンを発行するのに必要な通貨(XCP)はトークンセールではなく、ビットコインをバーンすることによって発行されました。この際にバーンされたビットコインを取り戻すことはできません。これをOne-Way Pegと解釈することができるでしょう。XCPの発行は無期限に行われたわけではなく、期間限定で行われました。そのため、発行が終了したあとはXCPの需給により値動きします。一方でPerpetual One-Way Pegにおいては、無期限で発行が続けられるので、サイドチェーン上のトークンの価値が上昇すれば新規に発行できるため、値動きは限定されます。

なぜOne-Way Pegなのか

そもそもRuben Somsenがこの構想を提案する理由として、「独自のブロックチェーンを作成する上で独自トークンの発行が避けられず、機能よりもそのトークンの価格本位になりがち」だという点を挙げています。例えばトークン価格をパンプするための機能や発表が優先され、本来の機能を妨げるような変更、保守性や安全性が低下する変更が加えられたりする場合がよくあります。


そこで、独自トークンによる投機性を排除する方法があれば、チームはプロジェクトに集中できて倫理的だというのです。少なくとも「あえてその手段を取らない」場合に、その理由を追及することができるようになります。先述しましたが、もしサイドチェーン上のトークンの価値が上昇しても、オンチェーンから移行することでいつでも新規発行できるため、乖離がすぐに是正されます。

さらに、この選択肢が取れるオンチェーンのBTCのほうが理論的には価値が高く収まるとも考えられます。サイドチェーンに移行されるとビットコインの総量が減少することも、ビットコインホルダーに有利です。したがって、サイドチェーンのネイティブトークンに関して、ビットコインに対する投機的な優位性はないだろう、とRuben Somsenは考えています。また、価値の高いオンチェーンのBTCをわざわざサイドチェーンに不可逆的に移行させるには、サイドチェーンの利用がその差額以上の価値を提供する必要があるため、「時価総額」よりもブロックチェーンの価値が可視化されやすいかもしれないと感じました。

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