先月エルサルバドルで開かれていたAdopting Bitcoin 2021というカンファレンスはライトニング関連のテーマが中心となり、その中でPeerSwapというコンセプトが発表されました。PeerSwapはアトミックスワップを使ってライトニングチャネルのリバランスを行うプロトコルです。
直接チャネルがつながっているノード間でP2Pで動作し、他のリバランス方法より安価に偏ってしまったチャネルバランスを調整できるとするPeerSwapはシンプルで画期的かもしれないと感じました。今日はそんなPeerSwapを紹介します。
既存のリバランス方法
ライトニングネットワークにとって、それを構成する各チャネルのバランスはスムーズな送金を実現する上で決定的に大事な条件です。
ライトニングネットワーク上の資金は無作為に流れているわけではなく、そのときに受け取り需要のある地点に向けて送金が偏りがちなため、ペイメントチャネルは放っておくとバランスが片側に偏ってしまう傾向にあります。このようにチャネルのバランスが不均衡であったとしても他のノードからはわからないので、支払いの試行→失敗が繰り返されてUXの低下につながるほか、そのチャネル自体が試行される確率が下がりネットワークの資金効率も低下します。
そこでバランスが偏ってしまったチャネルをリバランスする方法が色々と試されています。いくつかのノードを経由して自身に支払うCircular Rebalancing、単純にチャネルを新たに開く方法、3者間で協力的にチャネルを開くことでInbound/Outboundともに確保するLiquidity Triangle、Lightning LoopやPoolを利用する方法などがあり、それぞれに費用面や労力面で特徴があります。
例えばチャネルを新たに開く方法はLiquidityがInboundに偏った場合にのみ有効であり、チャネルの開閉に関わる手数料がかかってきてしまいます。同じオンチェーンのチャネル開設でもLiquidity Triangleは必ず50:50のバランスが得られますが、オンチェーンの手数料に加えて段取りに労力が必要な上に、ピアの質が良いとは限りません。
またLoopやPool、あるいは通常のCircular Rebalancingは費用が嵩みやすいほか、ルーティングのゼロサムゲームに参加する必要があり、チャネルの手数料管理について知識がないと損をしやすいと言えます。(すぐまたバランスが偏ってしまい、手数料負けするなど)
PEERSWAPの特徴
PeerSwapは既存のチャネルのバランスを、そのチャネル相手とのアトミックスワップを使って調整するというアプローチを取ります。これによって、直接チャネルでつながっているピアと協力的に、かつトラストレスにオンチェーンでチャネルのリバランスをすることができます。