今週、ビットコイン関係のツイッターがある話題で持ちきりになっています。GitHubのBitcoin CoreリポジトリにPeter Todd氏が提出した以下のプルリクエストです。
この提案は、現在Bitcoin Coreノードのトランザクションリレーポリシーにある「OP_Returnは1トランザクションあたり1つまで、かつ83バイトまで」という制限を撤廃するものです。
想像に難くないことですが、2023年のOrdinals Inscriptionsの登場をきっかけにビットコイナーの中ではブロックチェーンに任意のデータを刻まれることに強い抵抗感を感じる人達が多くいます。今回の提案に大して、そのようなビットコイナーの多くが反発しています。
日本国内でOrdinals Inscriptionsについて触れたメディアはおそらく本稿が初めてでした。
主にBRC-20トークンなど草コイン投機目的のトランザクションがもたらした手数料の高騰で悪印象を抱いたビットコイナーも多かったと思いますが、それだけでなくOrdinals InscriptionsはビットコインのUTXOセットを膨らませてしまうことでビットコインノードのハードウェア要求を高めてしまいました。2022年末は4.7GBほどだったUTXOセットは、現在では11GBほどまで増えてしまっています。
これを受けて、Luke Dashjrを筆頭に一部のビットコイナーはOrdinals Inscriptionsをフィルタリングしようと動き、マイニングプールのOceanが生まれたり、Bitcoin Knots(昔からLuke Dashjrが動かしているビットコインノード実装)が盛り上がったりしています。現時点でOceanは全ハッシュレートの0.75%、Bitcoin Knotsは計測可能なビットコインノードの2.7%を占めています。
Oceanのチームは昨年のBitcoin Tokyo 2024にも参加していました。
しかし、P2Pでのトランザクション伝播段階でのフィルタリングはほぼ効果がなく、不要な複雑性をネットワークに導入してしまうばかりか、マイニングの寡占化を促進してしまう影響すらあります。かといって必ずしもOP_Returnの制限撤廃がすぐに必要ではありませんし、単体では現在存在するビットコイン上にデータを刻む用途の受け皿にはならない可能性が高いですが、形骸化しているものなので撤廃していくことは方向性としては正しいでしょう。コンセンサスではなくポリシールールに頼った弱い仕組みという点では、RBFフラグが立てられていないトランザクションをゼロ承認で受け付けていた時代と同じです。
RBF無効のトランザクションでもマイナーに直接提出するなどして置き換えることができたので、結果的にはすべてのトランザクションをRBF有効として扱うようノードポリシーが変更されました。
今日は以上の論点を掘り下げて、OP_Returnの制限撤廃を支持する立場での意見を示してみます。(とはいえ、残すメリットがないというだけで急いで撤廃する必要性は高くありませんが。)
・リレーポリシーによる制限は効果が乏しく、マイニングの寡占化を招く
・OP_Returnの上限撤廃は必ずしも問題の解決につながらない
・目的を果たせないポリシー(コード)は撤廃すべき