今週はユーザーがビットコインの価格変動を気にする必要なくドル建てのライトニングチャネルを扱えるStablesatsというサービスが話題になりました。
Stablesatsはエルサルバドルに拠点を置くライトニングネットワーク関連企業のGaloyが自社ウォレット内で提供するサービスですが、それ以外にもドル建てのライトニングチャネルの実現を目指すプロジェクトは多数あります。
今回はその中でいくつか主要なものを、仕組みで分類して紹介します。
カストディアル系
ビットコインを相手に預け、相手が自動的にチャネルの残高を管理してくれるものをカストディアル系としてまとめました。これらの特徴として、カウンターパーティーリスクが存在すること、そして多くの場合プライバシー面でも劣ることが挙げられます。
中央集権的な取引所でヘッジする形態が多いため、小規模な取引所が利用されている場合は保険基金が用意されていない、または小さいため、ボラティリティの高いときなどにヘッジが十分に機能しない可能性があります。
保険基金とはレバレッジ取引を提供する多くの仮想通貨取引所で採用されている機構の1つで、いわゆるゼロカットが続出した際に反対のポジションを持つトレーダーの利益が強制決済によって限定されないために存在する基金です。
2020年3月にBitMEXの保険基金がどのような役割を果たしたかなど、こちらのURLの記事がおすすめです:https://blog.bitmex.com/bitmex-insurance-fund-your.../
Stablesats
今回話題となったGaloyのサービスです。Bitcoin Beach Walletという自社ウォレットを持っているため、その中のカストディアルなサービスとして提供される模様です。ユーザーはビットコインを預け、そのときのドル建て金額で固定されたチャネルを得ます。
預けられたビットコインの一部はヘッジ取引用の証拠金として大手取引所のOKExに再度預けられているため、Galoyに加えてOKExのカウンターパーティーリスクがあります。
Standard Sats
Standard Satsはオープンソースで提供されている同様のサービスで、KolliderというLN専門の取引所を使ってチャネルのユーロ建て金額を固定します。カストディアルなのでKolliderおよびStandard Satsサーバーの運営者に対してカウンターパーティーリスクがありますし、特にKolliderは新興かつ小規模な取引所で安全性の経歴が良くはありません。
逆に、誰でも自分でStandard Satsサーバーの運営者役をすることはできます。Kolliderに問題があった場合に説明する責任を負いたくはないという気持ちがありますが…
ノンカストディアル系
何事もノンカストディアルでことを進める場合は複雑性が増しがちです。ドル建てのライトニングチャネルも同様で、DLCに似たオラクルを使った仕組みの採用や他チェーン上のスマートコントラクトを活用したものなど、トレードオフにより様々な形が考えられます。
カウンターパーティーリスクは押さえられますが、その他の部分で攻撃表面が大きくなりがちなためセキュリティ面でも開発に細心の注意を要します。
DLC.soy
Spotlightの開発者である小川さんが手掛けるDLC.soyは、DLCに着想を得た仕組みでバイナリーオプション取引を試験的に実装しています。将来的にはライトニングチャネルのドルペッグなどに活かす応用方法を検討中です。DLCと同じく、利用されていることについて無知なオラクルにのみトラストが発生する仕組みを目指しています。
BSCCO
ライトニングチャネルの原資産と決済方法をピア間で自由に指定できるようにするという私の(開発が停滞気味な)プロジェクトです。例えばスマートコントラクトにステーブルコインをロックするなどの運用方法が考えられますが、ビットコイン以外の通貨の利用には価格変動を狙った悪用対策が必須です。