2019年12月5日 4 min read

複雑化するマイニング戦略と、電力会社との協力関係の模索

複雑化するマイニング戦略と、電力会社との協力関係の模索
Photo by Jakob Madsen / Unsplash

マイニング業の成熟について今週読んで大変気に入った記事(英語)がありました。内容は自然エネルギー発電の増加による電力網への影響と、電力先物を利用したマイニング業のヘッジについてです。これまでに研究所内で話した電力の特徴やハッシュレート先物などとともに、これからのマイニング業界を理解するために重要になってくる要素がてんこ盛りだったので抄訳するとともに、一般的な話を含めて解説します。

記事の著者も言う通り、今はまだとてもシンプルなモデルで営業しているマイニング業者が多いと考えられていますが、市場環境がよりシビアになる中でリスクを制限するヘッジ方法などが取り入れられていくと、それを理解していることがトレードなどに役立つようになるかもしれません。

用語の定義:
電気料金 = すべてコミコミの消費者向けの料金
電力価格 = 業者間で電力そのものが取引される価格

記事の内容:抄訳

・電力は貯蔵が難しく、常に発電量≒消費量になる必要がある
・自然エネルギー発電は気まぐれなので、火力発電で発電量を調整する
・自然エネルギーが豊富で火力発電が発電していないときも、待機のためのコストを払っている(最終的に消費者が電気料金として負担する)
・自然エネルギー発電設備が増えると、それが最大限に電力を流している状態に耐えられる、普段ではオーバースペックな電力網が必要になり、やはり固定費増大につながる
・このように、電力の提供コストの大部分が電力網の維持など固定費なのに、消費者にとっては従量課金制である。つまり、自然エネルギー発電の増加による固定費の増加が、電気料金の上昇につながる

→当初はコスト増を我慢して、自然エネルギー発電の増加に伴い電力網の増強を行っていたドイツやデンマークでさえも、固定費増加からくる電気料金の高騰が問題となり、自然エネルギー発電からの買取り量を減らす方向に舵を切りつつある。そこで発電事業者自身が余剰電力でビットコインマイニングというのが1つの戦略。

・同じ地域の風力発電と太陽光発電を組み合わせることで互いに補完し、最大容量の5%程度の発電量は90~95%ほどの期間で安定して得ることができる
・残りの10%ほどの期間は電力会社など他の経路で調達するのもよいが…
・風力もソーラーも発電できない状況下では電力価格が一時的に大きく上昇する特徴があるので、普段から月間の予想使用量の10%は電力先物で調達しておき、そのときが来たらASICは止めて先物を売却する、という戦略もありえる
→法定通貨建ての収益を生むため、ビットコイン売却のタイミングが少し余裕をもって選べるようになるメリットもある。

※もともとマイニングできる価格水準で買った電力先物なのなら、個人的にはASICを止める必要があるのかは疑問でしたが、値上がり益とマイニングの利ざやを比較して値上がり益のほうが大きい場合の話のようです。
マイニングによって11円が13円になるが、電力先物が12円から16円になっていれば、操業を停止して先物を売ったほうが得、など。

また、比較的大規模なマイナーであれば複数地域にまたがってマイニングすることで、ある地域で天候によって電力料金が一時的急騰した場合にそこのASICを止めることでネットワークハッシュレートを下げ、電力先物を高値で売りながら他の地域に保有するASICの収益性を上げることができ、地理的分散のメリットが享受できる。

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