ライトニングネットワークを使用する上で小さな障壁となるのが「少量のビットコインの入手が必ずしも簡単ではない」ということです。取引所で買っても出金手数料が高かったり、Lntxbotなどで無料で稼ぐにも時間がかかります。これらは既にビットコインを持っているユーザーからしたら大した問題ではないかもしれませんが、これから試してみたいというユーザーには不便に映ります。
そこで、今回の記事は少量のビットコインを入手する方法の1つとしてのビットコインATMに関して考察します。
ビットコインATM業界とLN
CoinATMRadarという仮想通貨ATM情報をまとめるサイトによると、世界の仮想通貨ATM設置ペースは加速しており、2020年に入ってからの増減数は毎月300台前後の増加という過去最高水準で、現在世界には8000台以上の仮想通貨ATMが存在するそうです。
地理的な分布は8割以上がアメリカ・カナダとかなり偏ってはいますが、ATM自体の製造業者は非常に数が多いです(多くの運営者が自己設計のものを設置しているため)。デザインも銀行のATMのようなものから、ド派手なものまで様々です。今回は代表例として、2800台以上が運用されている最大手のGenesis Coin製のビットコインATMを見ていきます。
こちらに商品一覧がありますが、一番高いモデルであるGenesis1は$14,500、自分も実際にバンクーバーで使ったことのあるSatoshi1は$6,800、法定通貨からBTCへの一方通行しかできないFinney3は$4,500となっています。
手数料は多くの場合、固定部分と変動部分に分けられますが、変動部分の最頻値は売り・買いともに7%程度のようなので、固定部分が維持費を稼ぐとすると単純計算でGenesis1の元を取るには20万ドル強を取り次ぐ必要があります。(現在の価格で22BTC)
ビジネス的課題
手数料ビジネスだと、少額では利益が出にくいので、単純にライトニング対応に足踏みしているビットコインATMの製造業者は多いと思われます。(例外として、大手のGeneral Bytes社のビットコインATMは全てライトニング対応しています)
規制対応コストも、一般にビットコインATM事業の障壁となっています。国によって規制は異なりますが、一定額以上の利用には身分証の登録が必要であったり、少額でも必要な地域もあります。日本だと、交換業登録が必要になるので、既存の取引所にしか運用できませんし、実際にビットコインATMを設置しているところはありません。
上記の2つは、既にある程度の取引高のある既存のビットコインATMにはそれほど大きい問題ではないですが、主にLNでの利用を想定したビットコインATMの登場は阻む大きなコストです。(そのようなATMが必要かはさておき)
また、ライトニングならではの小銭への対応ですが、既存のビットコインATMは基本的に小銭に対応しておらず、また5ドルほどの固定手数料があることから少額の交換に向いていないことと、小銭に対応したとしてもオペレーションコストが増大して収益につながらないと思われるので、LN対応のATMでも紙幣の金額が事実上の最低購入額となるでしょう。