2023年7月17日 4 min read

ついにBinance ×ライトニングが実現。LN対応のメリットと今後への影響は?

以前からBinanceがライトニングに対応する話は出ていましたが、比較的スムーズに開発は進んでいたようで、本日正式にBinanceがライトニング対応の発表をしました。‌‌

以前から取引所がライトニングに対応するメリットなどについては話していましたが、今回改めて取引所がライトニングに対応するビジネス的メリットや今後の影響を簡潔にまとめます。

なお、ライトニングの仕組みや、ビジネス応用の考察などはすでに去年Diamond Handsとして公開した「ライトニングネットワーク概観」レポートでも書いているので、その内容も一部引用します。

取引所がライトニングに対応するメリット

コスト削減

まず最も直接的にわかりやすいのが、ビットコインの入出金のコスト削減効果です。‌‌

取引所は0.0005BTCなど固定のBTC出金手数料を課しているところが多く、これはユーザーにとっても決して安くはありません。‌‌‌‌

また、今年に入りOrdinalsの人気などの影響を受けてビットコインのオンチェーン手数料は高騰し、一時的に取引所が出金手数料負け(オンチェーンTx手数料>出金手数料)して、赤字が出てしまっている状態も見られました。

ユーザー数やオンチェーンのユースケースが増えていくにつれビットコインのオンチェーン手数料が今後も上昇していくのは間違いないので、今のうちにライトニングに対応することでBTCの入出金コストを削減し、取引所の収益性を改善し、ユーザー体験も向上させることが出来ます。

スピードと資金効率の改善

コスト以外でライトニング対応の非常に重要なメリットは決済スピードです。

今まで取引所にビットコインを入金する場合、オンチェーンTxを作成し、2ブロック承認ほどの時間を待つ必要がありました。これは通常20分程度と想定出来ますが、ブロック承認のタイミングは予測しづらいので運が悪いと自分のTxが承認されるまでに1時間以上待つ必要があり、その間にトレードの機会を失ったり、ユーザー体験が著しく低下してしまう問題がありました。

すぐにブロック承認してほしいときこそなぜかブロックが中々見つからず、数十分間Explorerをカチカチ更新し続ける経験をしたことがある人も多いでしょう。‌‌

取引所がライトニングに対応することで上記のような問題を解消し、ライトニングに対応している取引所間のBTC送金もほぼ即時で完了することになります。これはトレーダーにとって新しいアービトラージの機会を提供したり、取引所に置いておく必要のあるビットコイン量を削減することで資金効率やセキュリティを改善することに繋がります。

ライトニング決済とアプリケーションへの並行展開‌‌

取引所がライトニングに対応することで、取引所のアプリは実質的なカストディアル型のライトニングウォレットになります。

今後ライトニングに対応する店舗やオンラインストアが世界的に増えていったときに、ライトニングに対応している取引所アプリを持っているだけで世界中の店舗での決済にも対応できることになります。

また、取引所がLightning Addressなどの規格に対応することで、例えばゲームでプレイした手に入れた少額のSatsが自動的に自分の取引所アカウントに溜まっていく、といったユースケースも出てくるでしょう。

国際送金ユースケースへの対応

もう一つの取引所のライトニング対応の重要なユースケースが国際送金です。‌‌

現在Strike(アメリカ)、Bitnob(アフリカ数カ国)、CoinCorner(イギリス)、Pouch(フィリピン)、Neutron Pay(ベトナム)などのライトニング対応取引所/決済サービスがすでに存在し、これらの取引所上のライトニング決済と現地の銀行APIを組み合わせることで、従来よりはるかに高速かつ安価な国際送金を実現する事例がすでに出てきています。‌‌‌‌

Binanceのライトニング対応の今後への影響

最後にBinanceのライトニング対応が今後どういう影響を及ぼすかについて予測します。

その他の取引所の追随

これはイメージしやすいですね。Binanceが対応したのならそろそろうちも、という感じで世界的に取引所のライトニング対応のスピードが上がると思います。これは日本も例外でなく、そろそろ本格的に国内でもそういう話の検討が始まるのではないでしょうか。(というよりむしろ今から準備しないと出遅れる可能性が高い)

取引所間ライトニング入出金の利用の増加

Binance以外にもすでに大手ではBitfinex、KrakenやOKXなどがライトニング入出金に対応しています。それぞれの取引所でのライトニング入出金の利用は今までもありましたし、Bitfinexなどでのライトニング入出金も少しづつ利用が増えているようですが、やはり世界最大の取引所であるBinanceがLN対応した意味は大きいと思います。‌‌‌‌

ライトニング全般の利用度の増加

Binanceがライトニングに対応したことで、ライトニングを使った取引所間の資金移動の利用の実用性も大幅に上がりますし、Binanceから出金して直接オンラインストアでライトニング決済をしてものを買ったりなどのユースケースも出てくると思います。

トラベルルール対応など現実的な問題はあるにせよ、Binanceのライトニング対応はライトニング決済の全体の利用度の向上に繋がっていくと予想します。

ビットコインに関する認識の改善

これは若干希望的観測も含みますが、Binanceのライトニング対応は「ビットコインは遅くて高くて使いづらい」という誤解の解消に繋がる可能性があります。

一般的クリプトユーザーと話をしていると、ビットコインに対する理解度が17年以前レベルの話で止まっている人も少なくなく、そもそもライトニング自体を聞いたこともないし、ビットコインの(オンチェーン)送金は遅くて高いままでスケールしないと思っている人も多い気がします

Binanceがライトニングに対応し、利用者が増えていくことで、ビットコインがより活発に取引所間の資金移動に使われるようになったり、ビットコインに対する古い認識が解消されていくかもしれません。


取引所がライトニングに対応するメリット、Binanceのライトニング対応の今後への影響を簡潔にまとめてみました。今後利用実態のデータなども出てくると思うので、引き続きモニターしていきます。また、日本の取引所もそろそろ本気でライトニング対応を検討するべきタイミングが近いと思っているので、それについては別途考察します。

Great! You’ve successfully signed up.
Welcome back! You've successfully signed in.
You've successfully subscribed to ビットコイン研究所.
Your link has expired.
Success! Check your email for magic link to sign-in.
Success! Your billing info has been updated.
Your billing was not updated.