2016年6月24日 18 min read

The DAO事件の衝撃とEthereumの未来

The DAO事件の衝撃とEthereumの未来
Photo by Darius Bashar / Unsplash

お待たせしました。事件からちょうど1週間ほどが経っていますが、The DAO事件の概要と露呈されたEthereumの課題や今後の展望について自分の考えをまとめました。

実は事件前の時点では、The DAOの投票の仕組みのインセンティブ設計の問題点、攻撃ベクターなどについて解説し、長期的に考えてなぜ自分がThe DAOが上手く機能しない可能性が高いか、という記事を書こうと思っていたのですが、自分でも予期せない形で思ったよりずっと早くThe DAOは崩壊してしまいました。同時に自分も含め業界関係者に大きな衝撃を与え、多くの問題提起をしてくれました。その点では、The DAOの実験はすでに失敗したといえますが、意義は大きかったと思います。

今回の記事に関しては事前に注意書きをしておこうと思いますが、自分はThe DAOトークンもEtherも保有しておらず、今回の事件に関して金銭的被害や関心はありません。また、この記事の解釈や展望の予想はかなり個人的な意見、バイアスがかかっていることをあらかじめお伝えしておきます。自分はビットコイン推進派的な立場から、今回の事件やその後のEthereumの対応などをかなり批判的に見ています。今回の件は立場や考え方により大きく解釈が変わると思いますし、他に自分とは別の意見を表明する人たちが出てくれば議論としてはそちらの方が健全だと思います。(なので異論、質問などはコメントなどで自由にしてください)

The DAO事件の概要

一応簡単にThe DAOに何が起きたか、その後にどのように事件が進展したかを書きますが、実際起きたことに関しては日本語でもいくつか詳細に解説してくれているサイト、記事などがありますのでそちらを参考にしていただきたいです。具体的にハック攻撃の手法、詳細などは自分はほとんどの人にとっては重要ではないと思っており、この記事ではどちらかといえば事件の影響や今後の展望について中心に書きます。全体の流れに関してはCoinPortalさんがこちらの記事でも平易な文章で説明してくれています。また、ハックの攻撃の図式などの詳細に興味のある方はこちらの記事も参考にしてみてください。


一言で言えば、The DAOのSplit(分裂)機能の部分のコードのバグを利用し、ハッカーが通常の投票などなしで、The DAOが保有していたEtherの三分の一程度にあたる360万Ether(60億円相当)以上を勝手に分裂先のDAO(子DAO)に移動してしまったわけです。ただし、移動された(流出した)Etherはすぐに犯人が引き出せるわけではなく、The DAOのSplitのルールに従い、流出から27日間は子DAOに閉じ込められた状態になります。具体的なハック手法などを説明すると細かい話になりますが、正直これくらいのざっくりした理解で十分だと思います。

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