ハードウェアウォレット(HWW))を選ぶ際の注意点として、ハードウェアウォレット自体に画面がついているものを選ぶというのがあります。ハードウェアウォレット側で実際に署名するトランザクションの内容を確認することで、スマホやPCに表示されているトランザクションとは別の、悪意のあるトランザクションに署名することを防げるためです。
2月に起きたBybitのコールドウォレットからの流出も、トランザクションの内容をHWW側で確かめることができなかったのが直接的な原因の1つとなっています。
考えてみると、HWWがサプライチェーン攻撃に遭ったり盗まれるよりも、スマホやPCが宛先アドレスを書き換えるタイプのマルウェア、あるいは秘密鍵を盗むマルウェアに感染してしまう可能性のほうが高いのではないでしょうか。だとすると、HWW側の画面はとても効果的なセキュリティ対策になります。
しかし、カード型のフォームファクタで提供されているハードウェアウォレットも巷にはあります。例えばTangemというものがマーケティングに力をいれています。(力を入れすぎている?)名前に聞き覚えがある方は、昨年Tangemのシードフレーズが特定の条件下でスマホアプリ側のログに残り、サーバーに送信されていた事案を覚えていらっしゃるのかもしれません。
そう、カード型のHWWにはもう1つ弱点があり、シードフレーズ/秘密鍵をバックアップしようにも、一度アプリ側に送信して表示する方法しかないように思われます。(通常はHWWの画面に表示されるため、シードがHWWから外に送信されることはありません。)これはシード・秘密鍵を外界から隔離するという原則に反しており、仮に一度きりのことであってもデバイス側のマルウェア感染やアプリのバグ・バックドアに脆弱で、少し不安なところです。
カード型のHWWといえば、自分の中ではTapsignerが思い浮かびます。TapsignerはColdcardやOpendimeと同じくCoinkite社の製品で、NFC経由で使えるお手軽なHWWです。画面はありませんが、価格も安いのでマルチシグの一部として使われることが想定されている模様です。対応している数少ないウォレットにマルチシグ重視のNunchukが含まれていることからも窺えます。
そんなTapsignerは、通常のHWWやTangemなどと比べてもクセのある設計になっています。今日はどういう工夫で秘密鍵のバックアップなどを実現しているか、使ってみて体感したTapsignerの特徴を挙げていきます。
・画面がある別のHWWとの併用が前提?
・NFCを使ったセットアップや使用方法
・対象ユーザーは誰?