本記事ではビットコインやNostrなどのフリーダムテック開発に対し、助成金の提供によるサポートを行うOpenSatsという慈善団体について紹介します。
OpenSatsはビットコインの普及につながるビットコイン関連のソフトウェア開発、教育活動、リサーチ活動に対し、寄付をもとにした助成金による支援を行う公益団体です。
エンジニア職日本人ビットコイナーで「ビットコインが大好きだけどビットコイン関連の仕事が見つからない」と嘆いている方は多いと思います。そして妥協してWeb3系の企業に勤め、思想・文化の違いに後悔する人もたくさん見てきました。(筆者も過去に同じ経験をしています。)
Bitcoin Core開発者として、またはビットコイン関連のソフトウェア開発をしながらビットコインに貢献し、助成金という形で収入を得る方法の一つとしてOpenSatsから助成金を得るという方法を紹介したいと思います。
OpenSatsとは?
OpenSatsはビットコインコミュニティが持続可能性であるために、ビットコイン関連の教育や研究に資金を提供することを目的とした公益団体です。

サポートの対象となるのは以下のようなプロジェクトです。
- ビットコインソフトウェア開発
- 既存のフリーソフトウェアおよびオープンソースソフトウェアの改善
- ビットコインに関する教育
- ビットコイン関連のトピックの調査
オープンソース性を重視しており、オープンソース関連のプロジェクトであることは必須条件です。ソフトウェア開発以外の研究や教育プロジェクトに関しては、資料をオープンソースとして公開することが要件です。
また、ビットコインだけでなくNostr関連のプロジェクトに対してもサポートしています。
寄付による基金の運営
OpenSatsの基金は一般の人からの寄付から成り立っており、誰でもOpenSatsに対してビットコインで寄付することができます。過去にはTwitterの共同創設者のジャックドーシーが1000万ドルの寄付をしたと報じられています。

OpenSats自体も寄付で運営されていますが、ビットコイン関連のプロジェクト基金とOpenSatsの運営予算は別の寄付先があるため、プロジェクト基金に対する寄付は全てプロジェクトのために使われます。OpenSats運営が手数料をとったりプロジェクト基金を運営費に当てたりすることはありません。
OpenSatsの申請から採択までの流れ
プロジェクトが採択される否かは応募書類とインタビューをもとに審査されます。

サポートには長期的なものと短期的なものの2種類があります。具体的な期間はプロジェクトによって異なりますが、数年単位の長期的なサポートを受けられることがあります。短期的なサポートでも、契約期間満了後、再度申請することで再びサポートを受けられる可能性があります。
採択における重要な基準として以下3点が記載されています。
- ビットコインの普及を進め、かつ資金調達が難しい貢献内容
- ソフトウェアやツール、教育用コンテンツは無料かつオープンソースで公開
- 資金提供を受けた経験をコミュニティに共有し、教育的な活動に貢献する姿勢
OpenSatsについて調べると実際に採択された方の申請プロセスについての日本語記事も見つかります。
採択されると寄付金はビットコインで受け取ることができます。
審査プロセス

ステップ1: 応募書類審査
一次審査として、書類によるプロジェクト内容や応募者の能力・専門分野が審査されます。審査に合格すると次のステップに進めます。
ステップ2: インタビュー審査
OpenSatsの運営や専門家を交えたインタビューにより、プロジェクトの具体的な内容が審査されます。
ステップ3: 専門家による分析・評価
専門的な知識を持った関係者が、プロジェクトの内容の実現可能性や、申請者がプロジェクトを遂行する能力を持っているかを分析し、プロジェクトを評価します。
ステップ4: 最終決定
ステップ2,3の審査をもとに、プロジェクトの遂行能力を判断し、OpenSatsの取締役会の過半数の承認で採択が決定します。
ステップ5: 助成金契約とメンタリング
助成金に関する契約を締結した上で、OpenSatsの運営がプロジェクトの進捗や資金の使い方について継続的なメンタリングなどを行いプロジェクト完了、または契約満了までOpenSatsと二人三脚でプロジェクトに取り組みます。
OpenSats採択プロジェクト例4種の紹介

本記事ではOpenSatsでの採択プロジェクトをいくつか紹介します。有名なプロジェクトをピックアップしていますが、採択例では筆者も全く知らないようなマイナーな活動もあり、幅広くサポートされていることがわかります。
OpenSatsに採択されたプロジェクトはホームページから全て見ることができます。
1. Bitcoin Core
Bitcoin Coreに関連する取り組みも助成金の対象になります。
この括りではビットコインコアのソースコードのメンテナンスやプロトコル研究・開発に関する貢献はもちろんのこと、関連ライブラリやLNサービス開発、教育的なプログラムも採択されています。
2. SeedSigner: 自作可能なハードウェアウォレット
SeedSignerはオープンソースでソフトウェアが公開されている自作可能なハードウェアウォレットです。


3. Zeus / Sparrow Wallet: OSSソフトウェアウォレット
オープンソース(OSS)のソフトウェアウォレット開発もまた、サポート対象です。 Lightningノードの接続・操作が可能なZeus、高度なトランザクション作成が可能なSparrow WalletなどのウォレットがOpenSatsからサポートを受けています。
4. Damus / Amethyst : Nostrクライアント実装
DamusやAmethystはNostrのプロトコル標準に則ったSNS用のクライアント実装です。DamusはiOSアプリとして人気で、AmethystはAndroid向けクライアントであり、両方ともオープンソース実装です。
Nostr関連のプロジェクトもOpenSatsの支援対象になっています。OpenSatsにはNostr関連とビットコイン関連の基金が別にあり、Nostrとビットコインそれぞれの専門家が審査に関わり、プロジェクトごとの基金から助成金が出るようになっています。
日本人のOpenSats申請が少ないという課題

2025年11月23日に開催されたBITCOIN JAPAN 2025の前日に、テックカンファレンスとして開催されたDev Dayでも「ビットコイン助成金の歩き方」というOpenSatsに関するセッションがありました。
OpenSats側のスピーカーとしてrobsさん、サポートを受けている側のスピーカーとしてSeedSignerプロジェクトリーダーであるSeedさんと、ビットコインのプロトコル開発者でありUTXOサイズの圧縮手法Utreexoの研究・開発を進めるCalvin Kimさんが登壇されていました。
セッションでは上述した申請の流れを実際に体験した2人の感想や申請に思い立ったきっかけ、OpenSatsとして開発系のプロジェクトだけでなく教育系のプロジェクトに対する支援に力を入れているという議論がされていました。実際に採択プロジェクトを見てみると、教育系メディアなども最近活発に採択されています。(例: Fourth Wave of Education Grants)
セッションの中で、OpenSatsのrobsさんが「日本にたくさんビットコイナーがいるのに申請する人が少ない」と懸念していたことが印象的でした。Robさんは、日本人のビットコイナーは十分なスキルがあっても「自分が採択されるわけがない」と尻込みしてしまい、結果としてチャレンジにつながっていないのではないか、と推測していました。
まとめ:フリーダムテックの未来を支えるOpenSats
本記事では、ビットコイン / Nostr関連のプロジェクトに対する助成金を提供するOpenSatsについて解説し、申請の手順、採択プロジェクト例を紹介しました。加えて、OpenSatsの運営が抱いている日本人の申請が少ないという懸念について触れました。
ビットコインやNostrのようなフリーダムテック関連のサービス運営は、集権的な中央にならないためにもオープンソース性を求められ、ビジネスとしてお金を得ることが難しいです。
筆者の興味分野であるSSI関連のプロジェクトも資金繰りがうまくいかず失敗し頓挫、もしくは買収されて思想を捻じ曲げられてしまうなど、理念と収益の両立の難しさに直面する例を多く見てきました。
OpenSatsのような存在により、短期的な収益化に依存せず、公共性の高い技術開発が持続可能になり社会的意義が非常大きいです。
ビットコイン関連で趣味的な開発をしている方はもちろん、研究者を目指す学生にもぴったりだと思います。尻込みするのは勿体無いので迷ったらとりあえずチャレンジすることをお勧めします。
また、OpenSatsに対する寄付という形でビットコインコミュニティに貢献するのも将来のあなたのためになるかもしれません。
筆者も研究方針が定まった時はチャレンジし、その過程の経験を記事にするつもりです。

