今週、個人的に日本でビットコインよりweb3のほうが人気がある理由を考えていて(カンファレンスでこのトピックに触れるセッションを受け持っているため)1つの仮説を思いつきました。それは日本のカストディ規制の厳しさ、つまりカストディに交換業のライセンスが必要なことが原因なのではないか、というものです。
2018年ごろまでは日本でもツイッター上に投げ銭機能をもったTipbotと呼ばれるボットが多数存在し、仮想通貨をある程度気軽に使える土壌があった気がします。しかし、2019年~2020年にかけてのカストディ規制の施行(他人のために暗号資産を管理する場合は交換業ライセンスが必要)により、国内産のものは駆逐されてしまいました。
そこでカストディ規制を受けて、Web3という名目上分散化されているプラットフォーム上のスマートコントラクトという、「カストディに限りなく近くても該当しないと主張できる」便利なものに目が向いたのではないでしょうか。例えばAdmin Keyのあるスマートコントラクトはカストディであると主張することもできそうですが、現状そういう扱いにはなっていない雰囲気があります。つまり、これまで法的にカストディに該当してしまう形でしか実現できなかったプロダクトを、法的にノンカストディアルな扱いを受けられる形で開発できる点が注目されているという説です。
強いて言えば、海外の草コインTipbotも当時と比べて大幅に減っていることはこの説の反証になっているかもしれません。
そうなると、ビジネスロジックをブロックチェーン上に書き込んでしまうわけにもいかないビットコインがWeb3に流れた開発者にとって再び魅力的になるにはカストディ同様の残高の扱い方の柔軟性を実現しつつ「カストディに該当しない」スキームが必要なのではないでしょうか。
今日はMulti-institution Custodyというスキームによって日本法におけるカストディに該当しないウォレットのスキームについて調べてみました。特に後半は考えがまとまりきっていないかもしれませんが、ご容赦ください。
・Unchained Capitalが2018年から提供しているMulti-institution Custodyとは
・日本でもαU WalletがMulti-institution Custodyモデルでユーザーのシードフレーズのバックアップを保管している
・シードフレーズの管理がセルフカストディの一番のハードルになのか?
・Multi-institution Custodyで事実上のカストディアルウォレットは作れない