今月始めに、Lightning Labsが10億円を超える規模の資金調達を実行したことが発表されました。それと同時に「Loop」という初の商業用のプロダクトもリリースされました。(Loopについては詳しくは後述)
今回のLightning Labsの資金調達に加え、同じくLightning Networkの主要な実装を提供するフランスのビットコインスタートアップ、Acinqも去年10月に8億円強の調達を行っています。これでトップLightning Network開発企業はある程度以上の金額の調達を成功させ、本格的にLightning Network関連会社のビジネス化のトレンドが始まりつつあるといえます。
LIGHTNING NETWORKとビジネスモデル
さて、同時にここで疑問も浮かびます。今回Lightning Labsは10億円を調達しましたが、Lightning Networkで今後どのようなビジネスモデルを構築するつもりなのかということです。
これが簡単にわかればまさに誰も苦労しない、という話なのですが、AcinqもLightning Labsも実は共通して「Lightning Service Provider」(LSP)と言えるコンセプトのプロダクトをリリースしており、今後しばらくこのLSPでのポジションの取り合いや、そこでのビジネスモデルの試行錯誤が始まると想定されます。
LIGHTNING SERVICE PROVIDER(LSP)とは?
LSPの説明をするには、まずは基本的なLightning Networkの仕組みを理解する必要があります。詳細はこのコラムでは割愛しますが、過去に公開した以下のレポートを参考にしてください。
「5分でわかるLightning Network」
「ユーザーから見たLightning Networkの課題」
端的に言えばこうです。
Lightning Networkのウォレットやアプリケーションはオンチェーントランザクションと違い、単純なウォレットに加え(ウォレットの上のレイヤーで)Lightningのノードに「流動性提供」「効率的なルーティング」「ネットワーク監視」「バックアップ」などの付加的なサービスが存在しないと、送金や受金が上手く機能しない。ユーザーが安定して簡単にLigtningを使えるような環境を裏で提供するのがLSPの役割。
LSPとは元々Internet Service Provider(ISP)をパクったような名前で、ISPがユーザーへ安定したインターネット接続というサービスを提供するように、LSPはユーザーへ安定したLightning Networkの利用、というサービスを提供します。
ちなみにこのLSPという言葉を使い始めたのはBreezというウォレットの開発チームですが、まだこの言葉も定着しきってはないですし定義もまだ曖昧です。ただし、今後LSP的なコンセプトの技術やプロダクトの議論はさらに活発になるのは間違いないです。
代表的なLSP
現状存在するLSPの具体例をいくつか紹介します。
Inbound Capacityの提供
現状最も利用されておりサービスの競争が始まっているのが、Inbound Capacityを提供するLSPです。(Inbound Capacityについては前述した解説レポートやコラムを確認してください)
Lightning Network上のノンカストディアルのウォレットは、このInbound Capacityを提供してくれるLSPを利用しないとLighnting上で資金の受取りが出来ないわけです。ノンカストディアルウォレットのユーザーは例えば最大1万円分(0.01btc)をLightningウォレットで受取れるようにしたいなら、先にLSPに1万円分+手数料を支払って、彼らから自分のウォレット(ノード)にチャネルを裏で立ててもらう必要があります。
【代表的なサービス】
Thor by Bitrefill, Lightning Loop by Lightning Labsなど
Inbound Capacityを提供するサービスはすでに複数あり、それぞれ提供するサービスはほぼ同じです。ただしLoopの場合は例えば単純なInbound Liquidityの提供だけでなく、オンチェーンのコインとオフチェーンのキャパシティのスワップや、チャネルを閉じないで残高を補充したりする追加機能もあります。
LSP一体型ウォレット
こちらのコンセプトもまだ明確な名称はないですが、ウォレットとLSP的なサービスを組み合わせたプロダクトがいくつか出てきています。
前述のInbound Capacityを提供するLSPがウォレットインストール時からビルトインされており、ウォレットは自動的にサービスプロバイダーが提供するノードにつながり、Inbound Capacityの提供やルーティングなどはユーザーが自ら考える必要なくウォレット側が裏で調整してくれることになります。