先月は「bzxのDefiハック」事件が非常に注目され、Defiの安全性や価格オラクルの設計の問題などに注目が集まりました。
Flashloanという「1トランザクション内で資金の借入と返済を完了させる」という新しいコンセプトが今回のようなほぼノーコストの攻撃を可能にしたわけですが、具体的な手法はさておき今後もDefiへの攻撃やアービトラージは断続的にあるのではないかと思います。自分も細かい攻撃手法はそこまで深く理解してないですが、正直に言えば大部分のユーザーや企業にとって具体的手法はあまり重要ではない気がします。
( もう少し細かい話は日本語でもこちらの記事などで紹介されています。https://coinpost.jp/?p=133173&fbclid=IwAR12017AygVS6LIvyG8t79cubB1oD8puFA1pqgI10z6C83E2_FTuiCj9Ovk)
個人的に今回の一件も含めてより気になっているのが、Defiのより構造的な課題やブロックチェーンネットワーク全体への影響です。
それについて先日アメリカで行われたStanford Blockchain Conferenceというカンファレンスの発表でDefi、特にオンチェーン上のLending(貸借)サービスがEthereumなどのメインチェーンに与えるリスクや構造変化を研究する発表があったのでそのエッセンスを紹介します。
(細かい手法や前提条件は非常にアカデミックで中々理解が難しいですが、ソースを以下に置いときます)
カンファレンス時の発表の動画(2:53:00 からスタート)
ワークショップの内容の書き起こし
LENDINGサービスとメインチェーン上でのSTAKINGの共食い現象
- PoSのセキュリティモデルはロックアップされているネイティブトークンの価値や、代替的な投資機会の存在などに影響される。
- 代替的な投資機会として、Compoundなどのオンチェーン上でのLendingプラットフォームが出てきたことで、ユーザーには、
1. Lending platformにトークンを預ける
2. PoSのStakingを行う
という主に二つの選択肢が与えられている - 合理的なユーザー視点から言えばより利率が高い(収益性が高い)選択を常にするわけで、オンチェーンのLending Defi貸出金利がPoSのステーキング金利を上回ると、LendingがStakingに回されるはずだったトークンを奪う形になる(LendingとStakingの「共食い現象」もしくはPoSトークンの「取り付け騒ぎ」と言える)
a.Lending利率 > Staking利率が起きえる状況として、Etherの価格が下落⇒ショートポジションの需要発生⇒ショートポジション作成の為の借入需要が発生⇒Lendingの利率上昇