2021年12月10日 5 min read

ステーブルコイン人気で再燃するフリーバンキング議論

本コラムではステーブルコインの台頭を受け、海外でにわかに注目が高まっているフリーバンキングについて考察します。

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各国でステーブルコインの規制の在り方をめぐる議論が始まっています。日本でも金融庁が円に連動したステーブルコインを発行できるのは銀行と資金移動業者に限定する方針を打ち出したことを12月7日に日経新聞が報じました。

アメリカでも先月バイデン政権の金融市場作業部会がステーブルコイン規制に関するレポートを公開しています。レポートは1)個別のステーブルコイン発行管理体が抱えるリスク、2)1のリスクが顕在化してステーブルコイン決済システム全般が不安定化するリスク、3)ステーブルコイン発行管理体が莫大なシニョリッジを介して経済支配力を掌握するリスクを挙げ、これらを回避するために広範な法整備を早急に行うことで財務省、SEC、OCCなど金融規制当局が組織横断的に合意したことを伝えています。

こうしたステーブルコインに関する議論で「フリーバンキング」、特にアメリカのフリーバンキング時代に言及する人が増えています。

この現象をThe Economistは12月4日発売の最新号で「ステーブルコインの盛り上がりで『フリーバンキング』をめぐる議論再燃」というタイトルの記事で紹介しています。

https://www.economist.com/.../the-explosion-in...

フリーバンキングとは

歴史上には、民間銀行が自由に通貨(銀行券)を発行できる時代がありました。国家は銀行を規制することも銀行経営に介入することもありませんでした。銀行券は銀行の金準備などで100%または部分的に裏付けされ、その発行量の調整は市場原理に委ねられていました。このようなフリーバンキング時代に中央銀行は存在しません。つまり、政府発行紙幣も、金融政策も、「最後の貸し手」も存在しないのです。

今となっては想像することすら困難ですが、60カ国以上でフリーバンキング時代がありました。最初は10世紀後半の中国です。最盛期の19世紀から20世紀初頭には欧米を中心に広く見られましたが、20世紀半ばまでに中央銀行制度に完全に取って代わられました。

18〜19世紀にはAdam Smithをはじめフリーバンキングを支持する経済学者が多数いましたが、19世紀半ば以降はほぼ皆無でした。

そんな経済学界の潮目を変えたのは、私のコラムに何度か登場しているオーストリア学派経済学者で唯一のノーベル賞受賞学者Friedrich Hayekです。1976年出版の「貨幣発行自由化論」で、国家による通貨発行権の独占に疑問を投げかけ、貨幣市場における銀行を含む民間企業の自由競争を認めるべきだと説きました。これを機に貨幣自由化とフリーバンキングが再議論されるようになり、関連論文も増えました。

ステーブルコインとフリーバンキング

では、なぜ今ステーブルコイン規制を訴える当局者がフリーバンキングに言及するのでしょうか?

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