2021年8月13日 5 min read

アメリカ覇権の屋台骨、原油本位制ペトロダラーのほころび ①

アメリカ覇権の屋台骨、原油本位制ペトロダラーのほころび ①
Photo by Galen Crout / Unsplash

ビットコインの究極の目的は、2021/06/04付けコラム「ビットコインは貨幣になれる? ①」にも書いたように、国家と貨幣の分離です。特定国に依存しない健全な貨幣、金が19世紀後半に平和と繁栄の時代を築いたように、ビットコインがユニバーサル貨幣となることで、政府が介入できない自由市場経済に回帰し、平和と繁栄を取り戻すという野望をビットコイナーは持っています。実現には、ビットコインが米ドルから国際準備通貨の座を奪う必要がありますが、決して非現実的なミッションではありません。チャート(出典: sgmoneymatters.com)が示すように、これまでも国際準備通貨は時代の変化に応じて約100年単位で代替されてきたわけですから。

今週、来週と2回に渡り、米ドルを国際準備通貨たらしめる仕組みと、その仕組みの存続を揺るがす要因を考察します。倒すべき相手を知ることで、ビットコインが果たして究極の目標を達成できるのかを考える一助になれば幸いです。

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現代貨幣史のおさらい

現在の法定通貨制度の起源は1944年のブレトン・ウッズ会議です。各国中央銀行が保有する金準備をアメリカに集めて一元管理し、米ドルにのみ金兌換を認め、他国は米ドルを準備金として保有することで、間接的に通貨の金兌換を保証するブレトン・ウッズ体制が生まれました。いわゆる、金ドル本位制で、実質的にアメリカFRBが世界の中央銀行となりました。図は金本位制と金ドル本位制の比較です(出典: Nik Bhatia著, Layered Money)。

新体制は各国が財政規律維持に努めた最初の数年は機能しましたが、次第に通貨膨張が蔓延し、体制に歪みが生じます。1963年のケネディ大統領暗殺後、ベトナム戦争の泥沼化などでアメリカの財政赤字が膨らむと、米ドルの金兌換性に対する疑念から、金準備返還を求める国が相次ぎます。金準備が残り少なくなり、追い詰められたアメリカは、1971年8月15日、突如ドルと金の兌換停止を発表します。いわゆる、ニクソンショックで、アメリカはドルを金に交換するという他国との約束を破り、デフォルトを起こしました。

世界で通用する全ての通貨が何の裏付けもない紙切れという人類史上初の事態は、こうして始まりました。

ペトロダラーシステム

1973年に第四次中東戦争が勃発すると、OPECアラブ諸国がアメリカを含むイスラエル支援国に対して石油の輸出を禁止します。結果、原油価格が暴騰し、世界経済はオイルショックと呼ばれる大混乱に陥ります。経済の血液である原油の価格決定権を完全掌握したOPECは、相次ぐ値上げで手にした巨利を金融市場に投じ、世界経済における影響力を急速に高めました。

パワーシフトと新たな地政学リスクを実感したアメリカは、1974年にOPEC主導国で世界最大の産油国サウジアラビアと、ある合意に達します。アメリカがサウジアラビアとOPEC諸国に軍事支援を提供する見返りに、OPECの原油販売決済をドルが独占するというものです。この合意により、ペトロダラーシステムが誕生しました。

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