ビットコインのレイヤー2はライトニングネットワーク以外にもいくつか出てきていたり、提案されています。そのうちの1つとして、Federated Chaumian Mintsというものが少し話題になっていたので、それがどういうもので、何ができるのかを調べてみました。
CHAUMIAN MINTとは
ビットコインが誕生する前にも、いわゆる仮想通貨というものは実験されていました。新しいものから遡ると、代表的なものではE-gold、Liberty Reserve、Digicash (Ecash)などが挙げられます。特に、公開鍵暗号による電子署名によって使用するEcashは論文で提案されたのが1983年で、David Chaumという暗号学者が考案しました。Ecashは考案者の名前を取って原始的なChaumian Mintに分類される暗号資産取引プラットフォームの代表例です。
Chaumian Mintは、運営母体のサーバー(Mint) がデジタル署名したトークンを付与し、ユーザーは移転の際にサーバーにそのトークンの所有権移転を請求するという構造になっています。基本的にこれらのトークンには、運営母体に預けられた裏付け資産が存在します。(現金を預けてトークン化してもらうなど)
この際、サーバーのデジタル署名はブラインド署名といってユーザー側が秘匿したデータに対して署名するため、ユーザーはサーバー側に対して追跡困難性と匿名性を獲得するという構造になっています。この構造こそがChaumian Mintの一番の特徴と言えそうです。
ところで、トークンの内容をブラインド署名の仕組みによってサーバーに対して秘匿できるということは、不正な金額の送金などはどうやって防ぐのかという疑問が生まれた方もいるでしょう。代表的なアプローチは、サーバー側がユーザーに多数の署名請求を用意させ、そのうちの1つ以外のブラインドを外させて、1つでも不正なものがあった場合はブラックリストに乗せて資産を凍結するといったものがあります。
上記のことから、Chaumian Mintというシステムはカウンターパーティーリスクこそあるものの、プライバシー面ではとても優れているという特徴があります。また、Chaumian Mintがまだ比較的ポピュラーだった1990年代~2000年代と異なり、暗号学的に扱える資産であるビットコインやライトニングネットワークの台頭によって便利度が増しているという意見があります。
(少なくとも、話題にしている人たちはChaumian Mintをこれらの理由で再評価しています。)
このようにChaumian Mintというシステムは歴史の割に人気はなく、現在の利用例はBitcoin Lightning Wallet (BLW)のウォッチタワー代金の支払いに利用されていることくらいしか知りません。
Watchtowerは、自分のノードがオフラインの間に代わりに不正監視してくれるサーバーです。BLWでは、最初のチャネル開設時にChaumian Mintを利用してWatchtower利用トークンが50個購入され、Watchtowerを利用している間に徐々に消費されていきます。
FEDERATED CHAUMIAN MINT (FEDIMINT)でできること
さて、Chaumian Mintの不人気の一番の理由は、結局の所カストディを前提とするため資金の持ち逃げやトークンの不正発行リスクがあること、そして規制面でのリスクが高いことです。トークンの不正発行に関しては、監査性を高める様々な試みがありますが、カストディを分散化して(フェデレーション型にして) もう少しトラストが分散するようにしてみよう、というのがFederated Chaumian Mints (FediMint)というアイデアです。