昨年末からNostrが盛り上がる中、ビットコインやライトニングネットワークとNostrを組み合わせたプロダクトのプロトタイプがいくつか生まれています。投げ銭をするZapやPayjoin, CoinJoinのコーディネーションの次はいわゆるDEXなのではないか?と予想していた方もいるでしょう。
実際に今月、Statechainsウォレットを手掛けるCommerceBlockのNicholas Gregory氏、P2P型取引所PaxfulのRay Youssef氏、ビットコイン開発者のAntoine Riard氏が連名で"Civ Kit: A Peer-to-Peer Electronic Market System"というホワイトペーパーを公開しました。タイトルがBitcoin Whitepaperのオマージュになっていますが、これはNostrを活用してビットコインのように検閲耐性とパーミッションレス性を持った板取引型のマーケットプレイスを実現するという構想のようです。
今日はCiv Kitのホワイトペーパーを読み、どのようなものか簡単にまとめます。
ちなみにPaxfulはP2P取引所大手でしたが、規制環境の強化や従業員の離脱により今月事業を畳むことになったようです。
高い検閲耐性、低い参入障壁、競争による健全性の維持を目指す
著者たちは現在の国際貿易に用いられる市場はそれを設計・主宰する国にとって有利であり、参入障壁や透明性の低さ、高コスト体質などにより発展途上国・後進国や移民・若者などのマイノリティに不利であると断じています。また、これらの性質が貿易のコストのみならず国際的な決済手段になっている法定通貨(※ドル)を入手するコストにもつながっていると主張しています。
個人的には1段落で主張する内容としては少しスケールが大きい気がしますが、アメリカやEUなどによる数々の規制が後発のプレイヤーの参入障壁を高くしているのは事実でしょう。なぜならば決済通貨という地位には莫大な利権が伴うためです。
そこで、分散型で参入障壁が低く、検閲耐性の高い取引システムを構築できればコスト削減や不平等の解消につながる、というのがCiv Kitを開発した動機とされています。
具体的には"Functionaries"と呼ばれる取引所を提供するサーバーを誰でも簡単に立ち上げられるようにすることで、オープンな取引環境を継続的に提供できるのではないかという発想で、まさにNostrを使って誰でもRelayを立ち上げて提供できることでオープンなSNSを実現できるという主張に相似しています。
一般的なDEXと呼ばれるシステムが採用しがちなグローバルなコンセンサスシステム(エンタープライズブロックチェーンやパブリックチェーン)を用いるアプローチはスケーリング面での課題やレイテンシ等による中央集権化圧力、アップデートのデプロイコストの上昇などを招くなどの理由で切り捨てられています。これはRGBやTaro、ライトニング、DLCなどビットコイン系のプロジェクトやプロトコルに比較的共通する、いわゆるスマートコントラクトチェーンとは異なる考え方ですね。
具体的な仕組み
Civ Kitの参加者は下記に分類できます: