ビットコインマイニングにおける採掘報酬は「新規発行分+ブロック内の総トランザクション手数料」ですが、前者が半減期によって減少していく中で後者だけでネットワークが健全に持続できるかについて疑義を呈する人も少なくありません。
送金手数料はかなり変動するもので、送金需要が少ない期間は地を這うような低水準なのに急に高騰したりします。採掘報酬に占める手数料の割合が大きくなるほど、これがほぼリアルタイムでネットワークのハッシュレートにも影響してくるという見方があります。
仮にこのように手数料の変動を受けてハッシュレートが不安定化したり減少しやすくなった場合にも、(既存のブロックを巻き戻すのに必要な労力を十分に積めばよいだけなので)現在より長い期間決済を承認とみなす閾値を伸ばせば十分にPoWのセキュリティは享受できますが、これによるユーザビリティの側面での悪影響は未知数です。
個人的には、分散性を重視する以上は人間がビットコインの変化に適応する必要がある部分もあると思いますが。
ビットコイナーの間でこれを問題視する人もいくつかのアプローチを提案しています。例えば、Peter Todd氏が2100万枚の上限を撤廃し一定量の発行を未来永劫続ける「Tail Emission」を提案していることは夏に本稿でも記事化しました。
ほかにも、手数料のボラティリティを下げる方法があれば影響が軽減されるという考え方もあります。例えば、送金手数料は次の72ブロック(6時間)に分けて分割でマイナーに割り当てられるとか、送金手数料を先物のように予約できる(安いときにあらかじめ購入し、高いときに購入せずに済む)仕組みの導入などです。これらはそれほど具体的な話になっていないようですが、アルトコインには需要によってブロックサイズが変動するという似たような仕組みが導入されているものもあります。
今日はまた別のアプローチとして「Bitcoin Hodler Tax」と呼ばれる、保有期間に対して手数料を払う仕組みを考えてみます。あくまで不人気な提案であり、概念以外はそれほど決まっているわけではありませんが、ビットコインが主に価値の保存に利用されている以上、応益負担は考え方としては悪くないような気もします。
(なお、あまりビットコインに詳しくない人が言いがちな「手数料が不足してマイナーが一切いなくなる」というような極論は送金需要があれば手数料が増加する手数料市場や、ハッシュレートが下がればブロックが見つかりやすくなる難易度調整の仕組みについての理解不足です。騙されないでください。)
・ユーザーあたり年間平均のオンチェーンTX回数は「0.66~1回」
・Bitcoin Hodler Taxはいくらが最適か?
・ソフトフォークで導入できるアプローチは簡単だが、必ずしも問題解決につながらない