「ビットコイン決済は、結局日本で流行らなかった」と考えている方は多いです。

2017年以降ビットコインの話題が大きくなったものの、金融資産としての投資観点のみ注目され、決済観点では注目されてきませんでした。実際に、日本でビットコイン決済が可能な店舗やECサイトは限られています。

しかし、グローバルに目を向けるとビットコイン決済は少しずつ広がりつつあります。

具体的には、米国の決済サービスであるSquareがPOS端末でのビットコイン決済を開始し、米国の老舗のハンバーガーチェーン店、スイスのルガーノ市やエルサルバドルなど、ビットコイン決済が可能な店舗が徐々に増えてきています。

また、日本国内においてもビットコイン決済を提供し続けている店舗や、インバウンド顧客向けに導入を検討している企業や店舗もあります。

本記事では、日本においてビットコイン決済の普及を妨げている誤解を整理しつつ、ビットコイン決済の導入メリット3選と具体的な事例を紹介します。この記事を読むことで、ビットコイン決済のリアルな現状と、ビットコイン決済を導入することへの優位性がわかります。

なぜ今、「ビットコイン決済」が再び注目されているのか

ビットコインはこれまで「投資資産」として注目されてきました。しかし最近では、支払い手段としてのビットコインが改めて注目され始めています。

2017年のブーム後、ビットコイン決済は一時的に目立たなくなった

People holding sparklers at night celebration

確かに、「ビットコインのブームは終わった」と感じる人も多いでしょう。実際、「2017年の仮想通貨バブル」を超える熱狂は起きていません。

ただそれは、ビットコインが投機の対象から社会的なインフラとして見直される段階に入ったとも捉えられます。

決済面では、2017年4月にビックカメラ社がbitFlyer社と連携し、ビットコイン決済を導入して話題になりました。決済の仕組みとしては取引所を介したものであり、オンチェーン決済やLightning Network(以降「LN」と呼ぶ)とは異なります。

2017年の時点では、ビットコインを日常的な支払いに使うための技術や仕組みは十分に整っていませんでした。

しかしその後、決済速度や手数料の課題を解決するための技術開発(LNや関連サービス)が進み、ビットコインの決済活用に関するインフラが徐々に整備されていきました。

ビットコイン決済が再び注目を集めている背景

LN関連のサービス普及と、事業者によるビットコイン決済の導入が徐々になされてきたことによって、ビットコイン決済が再び注目を集めています。

ビットコインのオンチェーンでは決済完了(ファイナリティ)が確定的ではなく、決済がブロックチェーンに取り込まれるのに約10分程度かかってしまうというデメリットがありました。

2018年以降に本格的に開始されたLNにより、ビットコインを即時かつ少額決済が可能となります。結果的に、LNを使用すれば10分待つことはなくなり、現在のQRコード決済のような体験が可能となります。

ビットコインには中央集権的な組織がないため普及には時間がかかります。一方で、米国では決済サービスのSquare社がビットコイン決済を導入したり、スイスのルガーノ市、中央アメリカのエルサルバドルなど特定地域で使用されつつあります。

ゆっくりですが、着実にビットコイン決済ができる店舗やサイトが増加してきています。

日本でビットコイン決済が普及しない3つの誤解

グローバルでビットコインが使われ始めている傍らで、日本においては次の3つの誤解からビットコイン決済が普及しづらい状況にあります。

  • 誤解①:価格変動が大きく、決済には向かない
  • 誤解②:利用者が少ないから導入しても意味がない
  • 誤解③:事例が少ないから実現は難しい

それぞれの誤解について解説します。

誤解①:価格変動が大きく、決済には向かない

ビットコインの価格変動(ボラティリティ)は高いとよく指摘されています。確かに、ビットコインは日本円と1対1の関係ではないため、少なからず価格変動はあります。

ただ、ビットコインの価格変動は年々減少傾向にあります。2017年頃は非常に高い価格変動がありましたが、下図より徐々に減少していることがわかります。

図:ビットコインの年間変動率の推移(2016年1月〜2025年10月) 各期間において次の計算式を用いております。(最高値 - 最安値) / 最安値 (%)

そのため、必ずとは言い切れないものの、事業者が決済で受け取ったビットコインが次の日に日本円建てで数十%以上下がってしまう可能性は低くなりつつあります。ビットコインの流動性は十分に大きいため、円転についても支障が出にくいです。

また、ユーザー体験も向上しています。LN対応のウォレット(以降、「ライトニングウォレット」と呼ぶ)において、円建て換算により必要なビットコインが自動計算する機能が付属していることが多いです。

そのため、例えば1,000円の商品の売買を行う際に、ユーザーの方で1,000円になるよう計算する必要はなく、単に円建て表示で1,000と入力するだけで必要なビットコイン数量が表示されます。

その他にも、ライトニングウォレットを使用すれば即時決済が可能です。オンチェーン決済の場合は約10分の待ち時間で価格変動が起きる可能性がありますが、LNであれば数秒で到達するため待ち時間で価格変動は発生しづらいです。

たしかに日本円に対して価格変動は0ではありません。しかしながら、価格変動率の減少や、ウォレットのユーザー体験向上から、価格変動が原因でビットコイン決済が難しいという事象は減少しつつあります。

誤解②:利用者が少ないから導入しても意味がない

potted plants on sidewalk

ビットコイン決済を導入しても、結局誰も使ってくれないから意味がないと思われる方もいらっしゃるでしょう。

たしかに、現状は日本国内でビットコインを日常利用するユーザーは限られています。日本円での決済を止めてビットコイン決済のみにした場合、当然ながら決済可能なユーザーは限られてしまいます。

一方で、日本円決済を継続しつつ、ビットコイン決済も並列して受け入れることは新しい顧客の開拓に繋がると考えられます。

ビットコインを日常決済として利用するユーザーは過去に比べて増えていますし、加えて日本への旅行客の中でもビットコイン決済が可能な海外ユーザーは少なくありません。

身の回りでビットコインユーザーは少ないと思われるかもしれませんが、ビットコイン決済を受け入れることで、普段来ないお客さんが店舗に立ち寄ってくれる可能性が上がります。

また、後述しますがビットコイン決済を受け入れることをブランディングとして活用する事例もあります。そのため、ビットコイン決済の導入は全く意味をなさないということはなく、打ち出し方次第では新たな顧客の呼び込みに繋がる可能性があります。

誤解③:事例が少ないから実現は難しい

ビットコイン決済の導入事例が少ないため、実現が難しいと考えている方もいるかもしれません。しかし、実際には海外ではすでに実例が多く、ウォレットや決済受入の事例も増えており、過去に比べて技術的障壁もかなり下がっています。

「BTC Map」というビットコイン決済を受け入れている店舗のマップがあります。自己申告のサービスではありますが、下図のように世界中で数多くのビットコイン決済受入店舗があることを確認することができます。

BTC Map:https://btcmap.org/map

また、海外に加えて日本においてもビットコイン決済の対応店舗が存在しています。グローバルに比べると数は劣りますが、今後ビットコインの存在感が増すに連れて、対応店舗も増加していくと考えられます。

BTC Map:https://btcmap.org/map

日本で導入事例が少ないということは、裏を返すと日本でビットコイン決済を導入することは、話題性の獲得や、ニッチな顧客の獲得にもなったりします。

Wallet of Satoshi:https://www.walletofsatoshi.com/

ビットコイン決済の導入方法は多数ありますが、例えば「Wallet of Satoshi」というグローバルで最も使用されているライトニングウォレットを使用すれば、今すぐビットコイン決済を受入れることができます。

上記画像のように円建てで価格を設定し、円建て価格に相当するビットコインを請求することが可能です。もちろん加盟店登録なども不要であり、許可なく誰でもいつでもビットコイン決済を開始することができます。

ビットコイン決済導入を検討する企業が増えている3つの理由

日本でもビットコイン決済を受け入れる事業者や店舗は増えていますが、グローバルでは顕著に大規模なビットコイン決済の導入が始まっています。

なぜわざわざビットコインの決済を導入するのか、それは経済合理性や、その他の決済システムの不安定さによる、ビジネス的な要因が大きいと考えております。主に下記の3つが考えられます。

  • 理由①:ビジネス観点におけるメリットがあるため
  • 理由②:ブランド価値のアピールにつながるため
  • 理由③:中央集権的な制約を受けない決済インフラだから

それぞれの理由について解説します。

理由①:ビジネス観点におけるメリットがあるため

white monitor on desk

ビットコイン決済を導入することは、ビジネス観点、経済的にも合理的と考えられるメリットが存在します。

具体的には、即時決済、低い手数料、チャージバックの防止、グローバル対応といった利点があります。

LNの即時決済性は、ユーザーにとっても嬉しいですが、店舗側も嬉しい側面があります。というのも、一般的なクレジットカードであれば、決済を受けて実際の支払いまでに少なくとも1営業日以上、長い場合は次の月に支払いを受けるというタイムラグが生じます。その間に支払いの資金不足にならないよう、資金を厚めに確保しておく必要があります。

一方で、ビットコインであれば顧客の支払いと同時に事業者の手元にビットコインが入ります。ビットコイン決済によって資金の滞留は解消されます。また、待っている間にクレジットカード決済の巻き戻し(チャージバック)なども発生しません。

加えて手数料も低いため、既存の決済システムに比べてユーザーに還元する余地が大きいと考えられます。

ビットコインが好きだからビットコインを導入したという事例もありますが、ビジネス観点のメリットがあるため継続してビットコイン決済を導入している事例も増えてきていると考えられます。

理由②:ブランド価値のアピールにつながるため

ビットコイン決済の導入は、グローバルで事例が増えているものの、まだまだ全体の店舗の割合と比較すると小さいです。

そのため、ビットコイン決済を導入することは顧客へのアピールに繋がります。

Steak 'n Shakeのポスト:https://x.com/SteaknShake/status/1992043334676644026?s=20

例えば、米国の老舗のハンバーガーチェーン店「Steak 'n Shake」は全米約400店舗でビットコイン決済の受入を開始しました。

ただビットコイン決済の導入をして終わりではなく、ビットコインの印を付けたバーガーを販売したりと、ブランディングにも活用しております。

Steak 'n Shakeのポスト:https://x.com/SteaknShake/status/1989429560551825822?s=20

「Steak 'n Shake」の動きは一見ビットコインを盛り上げているだけのように見えるかもしれませんが、ビットコイン決済を導入してから15%もの売上増加に繋がっています。

「Steak 'n Shake」はビットコイン決済を通じて、知名度獲得や売上増加に繋がった事例となります。

理由③:中央集権的な制約を受けない決済インフラだから

man on grass field looking at sky

一般的なクレジットカードや決済システムや中央集権的な組織が運営しています。そのため、まず決済を導入するために決済システム会社の審査を通過したり、サービス停止にならないようにするために利用規約を読み込む必要があります。

それでいて、決済システム会社の手数料変更も受入れる必要があり、悪く言えば常に従順な態度を取り続ける必要があります。

一方で、ビットコインは非中央集権な決済インフラであるため、特定の組織による制約を受けません。

ビットコイン決済を開始するために誰かの許可を得る必要はありません。また、ある日突然サービスが停止されるということもありません。

誰の許可を得る必要もありませんので、いつでもビットコイン決済を始めることができますし、逆に言うといつ辞めても、再開しても問題ありません。

もし、これまで中央集権的な決済システムに翻弄された経験があれば、ビットコイン決済の価値がより鮮明に見えてくることでしょう。

着々と増加を続けるビットコイン決済の導入事例

その他にも理由はありますが、主に上記で挙げた3つの理由により、ビットコイン決済の採用が国内外で着々と進んでいます。

具体的には、下記のようなビットコイン決済導入の事例があります。

米国の決済サービスである「Square」のPOS端末対応

Square HP:https://squareup.com/us/en/bitcoin

2025年11月、決済サービス「Square」について米国400万店舗でビットコイン決済が可能となりました。

LNでの決済が可能であり、当然ながら払い戻しやチャージバック等もなくなります。

参照:https://squareup.com/us/en/bitcoin

米ブロック社(Block, Inc.)の戦略|ビットコインを「日常的に使える通貨」へとする挑戦
ジャック・ドーシー率いる米ブロック社(Block, Inc.)のビットコイン戦略を徹底解説。主力サービスCash AppやSquareを用いたビットコイン決済普及活動、マイニングやハードウェアウォレット開発まで担うエコシステムの全貌とは。

米国の老舗のハンバーガーチェーン店「Steak 'n Shake」全店舗で対応

これまで何度か紹介しましたが、「Steak 'n Shake」という米国のハンバーガーチェーン店は2025年5月にビットコイン決済を導入しました。

LNでの決済が可能であり、米国全店舗の約400店舗でビットコイン決済ができます。ビットコイン決済の影響か、約15%もの売上増加にも貢献しています。

参照:https://x.com/SteaknShake/status/1934598191074144618

スイスのルガーノ市での店舗決済

スイスのルガーノ市では2023年12月、ビットコインとテザー(USDT)を税金や公共サービス等で使用できるようになりました。

また、それ以外にも一般的な店舗でのビットコイン決済が可能となっており、ビットコインを保有していれば様々なサービスでの決済で使用することができます。日本ではまだ難しいですが、ルガーノ市のように行政レベルでビットコインを受け入れ始めている例が存在します。

東京都内を拠点としたキッチンカー「ココロータス」

COCOROTUSのポスト:https://x.com/Cocorotus/status/1992416938019230023?s=20

「ココロータス」は東京都内を拠点としたキッチンカーです。長年ビットコイン決済を導入しており、日本においてビットコイン決済のパイオニアとも言えるかと思います。

キッチンカーのような屋台やショップ、他にも小規模な店舗や個人店などとビットコイン決済は相性が良いのではないかと、個人的に考えております。

参照:https://x.com/Cocorotus/status/1810808540195606973

不動産販売「オープンハウス」

画像:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000677.000024241.html

こちらはLNではありませんが、「オープンハウス」ではグローバルの顧客がビットコイン決済で不動産を購入することができます。

ビットコインであれば流動性も大きいため必要なタイミングで日本円へ換金することも可能であり、大きな金額についても決済対応することができます。

参照:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000677.000024241.html

まとめ:日本で普及していない今こそ、先行者メリットを得られる

2017年あたりにブームが去ったと思われるビットコイン決済が、なぜ今になって注目されているのか、歴史を振り返りました。

そして、ビットコイン決済に関する日本における誤解についても解説しました。ビットコイン決済は日本において事例が多くはありませんが、ビットコイン決済関連のインフラやサービスが増えているため技術的な障壁も下がりつつあります。

また、ビットコイン決済は加盟店のような仕組みではありませんので、いつでも、誰でも、どんな事業であってもビットコイン決済を開始することができます。その他にもクレジットカード等の既存の決済システムと比較し、LNでは即時決済やチャージバックができない仕組みであることから、ビジネス観点のメリットも複数あります。

日本円での決済を完全に代替するとは現状言えないものの、ビットコイン決済を開始することは新たな顧客の開拓や、ブランディングの拡張、他にも決済システム依存の分散にも繋がります。本記事をもとに、ビットコイン決済も手段の1つであることをご認識いただけますと幸いです。


日本ビットコイン産業株式会社ではビットコインを事業に活用したいと考えている事業者様からのご相談、お問合せを受け付けております。ビットコイン決済はもちろん、それ以外にもビットコインを事業に絡めてみたいなど、そこまで固まっていないご相談でも問題ございません。

何かございましたらお問合せページよりご連絡いただけますと幸いです。

お問い合わせ
ビットコイン研究所に関するお問い合わせフォームとなります。ビットコインに関する事業、メディアに関するご相談はこちらからお問い合わせください。