ビットコインが日本円での史上最高値を塗り替えたことで、”マイニング株”への興味が強まっているようですね。

※ マイニング株とは、ビットコインなどの暗号通貨の採掘(マイニング)を行うことで、対価として新しいコインの発行と手数料を獲得する企業の株式のことを指します。

ちょうどメンバーの方から頂いたご質問がタイムリーでしたので、ご回答を兼ねて筆者の考えも書いてみたいと思います。

以下は頂いたご質問です。


マイニング株が激しい動きで面白いことになっていますが、半減期を迎えるマイニング株企業は今後どんな展開が予想されるでしょうか?

個人的には、ETFに資金が流れるならマイニング株への資金流入は減るのかも?と思ったりもしましたが、株価の推移をみている限りそんなこともなさそうで、なんならさらなる飛躍もあるんじゃないかと思ったりもしてます。

価格の予想は難しいでしょうけど、今後どんな動きをしていくのかご意見をお聞かせいただきたいです。


まずは現状の確認をしてみましょう。代表的なビットコインのマイニング株として認識されているRiot BlockchainやHut 8 Miningなどの株価推移は以下のとおりです。

2024年の騰落率に絞ってみると、RIOTが-4%、Hut 8 で-41%、ビットコインは+21%超となっています。この数字だけを見るなら、ビットコインを保有しているほうがパフォーマンスも良いことになります。

もちろん、時期の切り取り方によってはマイニング株の方が有利になる場合もあります。

例えば2023年9月、ビットコインが16,000ドルを割り込んだ起点からの上昇率を比較すると、、、

Bitfamrs → Bitcoin → RIOT → Hut 8 という順でランキングされることになります。

つまり、マイニング株の保有でビットコインをアウトパフォームするには、以下の2つを達成する必要があります。

〇 正しい時期に買う(ビットコインが底値を付けたであろうとき)

〇 正しい銘柄を選ぶ(今回ならBitfarm<HUT8)

 2つの条件がそろわなければビットコインに劣後してしまうというのは、難易度としては高いといえるかもしれません。

では、2024年2月の現在が「正しい時期」かといえば、、、2か月ほど後に予定されている半減期をまたぐと、採掘されるビットコインの数も半分となる直前です。ビットコインの値段がその日を境に2倍へ切りあがらない限り、売り上げも半減することになります。

ですが、半減期を終えたビットコインの値上がりも、過去のパターンでは一年間ほど続いています。少し過去を確認したほうがよさそうですね。

半減期後の値動き・・・過去のパターンは?

ビットコインのマイニング株は、過去の半減期前後で、どのような動きをしてきたのでしょうか?下のチャートでは、マイニング株とビットコインの比較をしています。

黄色い縦線が過去の半減期。青線は主要なマイニング株(マラソンデジタル社・クリーンスパーク社・ライオット社)をビットコイン価格で割った比率の推移を表しています。

株価の上下よりも、ビットコインに対してどの程度のパフォーマンスを出しているかをしりたいので、このような計算を行ってみました。

すると、、、過去3回うち2回はノーズダイブしていることが分かります。最後の2020年は、横ばい・・・といったところでしょうか。

ただ、このチャートの右軸は対数です。2013年に10,000を超えていた指数は、現時点で1.08まで下落をしています。1万分の一ですね。

これを見る限りでは、ビットコインの現物を保有しているほうが「お得」であると考えるほうが安全かもしれません。

マイニング株がビットコインに対して劣後しやすい理由はいろいろあるでしょうが、決定的な要因は「競合が増える」ということでしょう。

マイニングで得られる報酬のビットコイン数は、取引手数料を除けば時間経過とともに減っていく一方です。これは変えることができないビットコインの掟です。

それに対して、ビットコインのマイニング会社は後からの新規参入組があります。いままで2社だけだった市場に新規参入が3社入れば、先行プレイヤーの市場シェアは削減されます。

さらにビットコイン価格に株価が追随するのはマイニング株に留まりません。たとえばマイクロストラテジー社のように、本業はビットコインと関係の薄い事業の会社がビットコインをストックすれば、その株価はビットコインと比較されることになります。

今はマイクロストラテジー万歳ですが、同じことをさらに大規模な会社が実行すれば、市場はより大きな会社をビットコイン関連株として見始めます。

つまり、株式市場の中でビットコインへのインタレストを独り占めできる会社はなく、先行組の株価は、どんどん新規参入組に食われる構造になっていると言えます。

筆者はアルトコインに否定的な見方をすることが多いのですが、これも暗号通貨市場の中で圧倒的No.1であるビットコインに集まった資金の流れ弾を、競合相手が増える一方であるアルトコイン同士で奪い合う構図になっているからです。

まとめ

こちらの記事では、過去の動きをみても、ビットコイン現物を保有したほうがリターンは大きく、さらにマイニング株は参入障壁が低く、新規参入でシェア奪われる構造にあることがマイナス材料となることなどを書いてきました。

一見、マイニング株には大きなチャンスがあるようにも見えます。

  • ビットコインよりも値動き幅が大きく稼ぎも大きい
  • NISAなど節税枠を使えば、税金による利益の目減りを回避できる
  • ビットコインが値上がりしているなら、マイニング株も鉄板っぽい

これを現実のものとして手に入れるには、以下のような条件も必要になりそうです。

  • 市場が目を付けていない個別企業の強み・弱みの把握
  • マイニング企業のインサイダー情報を持っている
  • チップ製造会社や電力会社の現場情報を持っている

投資をするうえで、「どうすれば大きく稼げるか」と考えるのは、とても自然なことだと思います。

ただ、市場に残っている参加者に共通しているのは、「どうすれば想定外の損失を避けられるか」「どうすればダマされる側に回らずに済むか」 という損失回避の考え方だったりします。

仮に本業で稼いだ余剰資金を、インフレに負けない資産に変えておく・・・ということならば、ストレートにビットコインの現物を保有しておくことに勝るものはないと考えます。

もしマイニング株での稼ぎを本業にする・・・ということでしたら、それなりのリサーチ、業界の人脈構築、製造現場での情報など、平均的な市場参加者が手に入れることのできない情報を入手することから始めると良いかもしれません。

筆者がズボラだからという理由が大きいとは思うのですが、ビットコインをアウトパフォームする銘柄選択に時間やコストをかけるのであれば、そのリソースを本業に投下して稼いだ方が安全だと感じます。

あくまで主役はビットコイン。マイニング株は、あくまで市場がビットコインに連動するだろうと勝手に想像している虚構くらいに考えておく方が、良いと考えます。

以上、筆者の主観満載で回答をさせて頂きました。もちろん筆者が完全に間違っている可能性もあります。ですから、考え方の踏み台にする・・・というとらえ方で読んでいただけましたら幸いです。

今週は以上です。引き続き、ハッピー・ビットコイン!

ココスタ

佐々木徹