突然の大雪ですね。筆者は九州のリモート拠点から昨日、16時間の長距離ドライブを経て埼玉へと戻ってきました。
帰着後にテレビを見ると、通ってきた高速道路は、通行止め&冬タイヤ規制がびっしり。
ギリギリで雪の影響を受けずに帰ってきましたが、”トンネルを抜けると雪国” などレポートの出だしに書くものじゃありませんね。反省しました。
さて米国を起点として法定通貨の大量投入をしてきた中央銀行も、いまや激しい物価上昇率を抑えるのに四苦八苦しています。
↑米国の消費者物価指数(CPI)は前年比で激しく上昇ー左軸が前年比上昇率(%)
https://fred.stlouisfed.org/series/CPIAUCSL#
インフレは私たちの生活コストを上昇させていきます。給与レベルがインフレ率を超えて上昇すれば良いですが、そうでなければ普段の暮らしは厳しくなってしまいます。
特にガソリン代の上昇が大統領の不支持率に直結する米国では、インフレは選挙戦そのものです。2022年9月の中間選挙を境に、はっきり米金利が下がり始めているのも「選挙は終わったしインフレ抑制もおわりでしょ」という市場の意識を表しています。
では今後、私たちを囲むモノの値段は上昇を加速させてしまうのでしょうか?それとも今のインフレはコロナ補助金による一時的な現象でしかないのでしょうか?
先に結論を書いてしまいますね。
歴史を振り返る限り、私たちは年間8%程度のインフレ率が標準の世界に生きています。
米国で消費者物価指数が「前年比8%突破」で大騒ぎが続いていますが、何のことはありません。いまの物価上昇率こそ歴史的に見た中央値なのです。
本日の記事では、皆さんと一緒に「インフレーション8.0 ~ Fiat通貨が人類にバブル経済をもたらした」について考えていけたらと思います。
政策側のインフレ予測は低めに出される
まず、政策の決定者たちはインフレ予測を低く見がちであるという点を知っておく必要もあるでしょう。
以下は2021年3月25日に出されたFEDのブログ記事です。
Are we expecting too much inflation?
CPI vs. University of Michigan's survey of consumers' inflation (March 25, 2021)
expectationshttps://fredblog.stlouisfed.org/2021/03/are-we-expecting-too-much-inflation
ざっくり言うと、、、
○ ミシガン大学の消費者物価予測と実際の物価上昇率を比べてみる
○ 個人は実際よりも物価の上昇率を高く感じている
○ 理由は身近なモノの値段だけ見て数字を書くので偏見が入りやすい
どちらかと言えば、消費者が主観的かつ過去の傾向に縛られて捉えている・・・という論調です。その後の結果は?
↑ 記事が参照していた2021年2月のCPI(青線)とミシガン大調査(赤線)
何のことはありません。記事が出たあとの物価上昇率(青線)は、ミシガン大が個人に調査したインフレ期待値(赤線)を一気に上抜き暴騰してしまいました。
もちろん、「値段が高くなる」と個人が信じて行動するから値段が上がってしまう、、、という自己実現が効いている部分もあるでしょう。
それを踏まえたとしても、政策側のインフレ予測は現実よりも低く出る傾向がある点は、明らかと言えそうです。
インフレは8%を一度超えると元に戻れなくなる
さて過去のインフレ傾向に関して、ドイツ銀行のリサーチ部隊が1920年まで遡り調べた結果の一部を公開してくれています。
https://www.gainesvillecoins.com/blog/is-gold-price-at-turning-point
1970年のニクソンショックでFiat通貨制度に移行した後の先進国に限定すれば、インフレ率が8%を超えたら、5年間は元の水準に戻ってこないとの結果など示唆が多いです。一読をおすすめいたします。
↑ 1970年以降の先進国ではインフレ率8%を超えると沈静化に5年(60ヶ月)を要している
バブル生成と崩壊の振れ幅を持ち込んだFiat通貨
ここからは過去のインフレ率を、勝手気ままに検証してみたものとなります。もちろん筆者は数学者ではないので、数字の誤差はあるものとお考えください、、、と前置きをしつつ。
まずインフレ率を長期的に調べるのに適した数字ということで、英国の住宅価格指数を確認してみます
https://www.gov.uk/government/statistical-data-sets/uk-house-price-index-data-downloads-may-2022#download-the-data
1952年以降の全住宅と新築住宅のそれぞれ価格指数と、前年同期比の騰落率(いわゆるインフレ率)が掲載されています。その全データを平均した結果がこちら。
↑ 1952年以降および1971年以降の英国住宅価格インフレ率(2022年まで)
目を引くのは、Max Min と書かれた欄でしょうか。これは前年比で価格の変化率が最大となった数値を、上昇・下降時ごとに書き出したものです。
ここからわかることは、前年比での変動率が最大となったのは、上昇・下降とも1971年以降であることが分かります。
参考までにFiat通貨制度が導入される前、1954年から1970年までの変動率は、最大下落-2.7%、最大上昇12.8%と、なだらかなものです。
英国の住宅価格という限られた指標ではありますが、およそ以下のことが分かってきました。
○ 人類の作った通貨制度は年8%のインフレが標準
○ Fiat通貨制度が拡大させたのは資産価格の変動率 → バブル製造マシン
暴騰と急落を繰り替えずバブル経済はFiat通貨によってもたらされたことは、間違いがなさそうですね。
人類が心地よく感じるインフレ率は7.7%
さて英国の住宅価格上昇率は、1952年以降の全期間でおよそ7.7%の上昇率であることがわかりました。
本年2023年は、ニクソンショックが起きた1971年から52年が経過しています。仮に年間インフレが7.7%なら、2023年の物価は1971年と比較して47.33倍になっているはずです。
ではFiat通貨の正反対であるゴールドの推移と比較をしてみましょう。