2024年5月13日 6 min read

Vol.259 短期トレードは富の敵!?1万人の投資家データが示す真実とは?(2024年5月13日)

Vol.259 短期トレードは富の敵!?1万人の投資家データが示す真実とは?(2024年5月13日)

こんにちは!今回の記事では、多くの個人投資家がやらかしがちな「短期取引の罠」について書いてみます。

「スキャルピングで大儲け!」といった言葉に飛びついて、短期売買を始めてのめり込んでしまう人は少なくありません。

出来上がったチャートを後から見て、「ここで買って、ここで売れば大金持ち!地球だって買えるじゃん!」と思ってしまう気持ち、とてもよくわかります。

だって、これは筆者が最初にトレードを始めようと思ったときの心の声ですから。。。

この記事では、カリフォルニア大学バークレー校の金融工学の教授であるオディーン教授の研究結果を見ていきます。またこの中で、なぜ個人が短期取引で損をしがちなのかを考察してみたいと思います。

取引の対象はビットコインでも米株でも共通するテーマですから、参考にしていただけましたら嬉しいです!

取引は富を損なう:個人の株式投資パフォーマンス

テリー・オディーン教授が行った研究は、1万人の個人投資家が1991年から1996年の間に株式の取引を行った記録の分析に基づいて行われています。

原文(英文)はこちら;

Trading Is Hazardous to Your Wealth: The Common Stock Investment Performance of Individual Investors

それらの結果から得られた最終パフォーマンスの図は以下のとおりです。

↑ 投資家の名目利益と最終利益を取引頻度によってまとめた図(Trading is Hazardous論文内より引用し筆者が手書きで注釈を追加)

簡単に図を説明しておくと、縦軸は年間のトレード収益率、横軸は取引の頻度を表します。

なお、右側2本のグラフは比較用です。Averaga Individualは調査対象の全員を平均したもの、SP 500 Index Fundは指数連動の投資信託を表しています。

こうして並べてみると明らかな傾向が読み取れるんですよね。

まず売買から得られる利益は、取引頻度にかかわらず一緒。ばんばんデイトレしようが、買って放置しておこうが、誤差くらいの差しかないのです。

ところが取引頻度が高くなるにつれ、最終利益は加速度的に悪化をしていきます。

売買コストが最終利益に差をもたらす

オディーン教授の調査結果では、最も取引頻度が高い投資家群の年間リターンはわずか11.4%であるのに対し、取引頻度が低い投資家群は18.5%となっています。

この理由は売買コストです。調査対象を平均したところ、往復で約1%のビッド・アスク・スプレッドと3%の手数料がかかっています。取引の頻度が上がればコストも比例して上昇しますから、それが一番大きなマイナス要因ということですね。

これに対して指数連動投信の取引コストは、買いで0.21%、売りで0.63%。名目のリターンはほとんど変わらないので、結果的に高頻度の個人投資家よりも指数連動型のリターンが良いという結果になっています。手数料で自滅?

ここで少しだけ「ビッド・アスク・スプレッド」について説明しておきますね。

ビッド・アスク・スプレッドとは、簡単に言うと、「売りたい人の望む価格と、買いたい人の望む価格の差」のことです。

例えば、あるお店でリンゴを売っているとします。お店の人は、リンゴ1個を100円で売りたいと思っています。これが「アスク(売り呼び値)」です。一方、リンゴを買いたい人は、90円なら買ってもいいと考えています。これが「ビッド(買い呼び値)」です。

この場合、「ビッド・アスク・スプレッド」は、100円(アスク)と90円(ビッド)の差額である10円になります。

株式市場でも同じことが起こっています。売りたい人の希望価格と、買いたい人の希望価格には差があり、その差がビッド・アスク・スプレッドです。

このスプレッドは、株を売買するたびに発生するコストと考えることができます。スプレッドが大きいほど、売買のコストが高くなり、最終リターンを圧迫します。

特に、頻繁に売買を繰り返す短期トレードでは、このスプレッドのコストが加速度的に積み重なっていきます。

オディーン教授の研究では、このビッド・アスク・スプレッドが、個人投資家の収益を損なう大きな要因の一つだったことが明らかになりました。

ところで個人の反対側で儲かっているのは誰なの?

さて、ここまではオディーン教授の研究結果をもとに、高頻度取引が個人投資家の最終利益を削りまくる・・・という点を明らかにしてきました。

でも、損をする人がいるってことは、反対側で誰かが儲けているわけですよね?ここからは、個人の損失を収益に変えているのが誰なのかを、軽くまとめておきたいと思います。

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