OP_CATの再有効化提案が議論を呼ぶ理由を解説。MEVとマイニング寡占リスクを中心に、懸念点と技術的背景を丁寧に整理します。
コベナンツを有効化する方法として様々なソフトフォークが提案されて久しいです。中でも最本命とされているOP_CTVについて、本稿では2022年に詳細にカバーしました。当時は反発も大きかったですが、Arkのためにコベナンツの導入を求める声が増えてきた今ではその影響範囲の小ささが再評価されています。
OP_CTVとソフトフォーク導入方法
先週は寄稿をお休みさせていただいたので前回から間隔が空いてしまいましたが、その間にビットコインの世界は一大論争が巻き起こっています。本稿でも何度か登場している独創的なビットコイン開発者、Jeremy Rubin氏が自身の提案するOP_CTVという機能のソフトフォークによる導入をSpeedy Trial方式で目指すと発表したのです。 ところが同じくSpeedy Trial方式で導入されたTaprootと異なり、まだユーザーやビットコイン開発者の中でOP_CTVに対して広く支持が得られていないこと、Speedy Trial自体がソフトフォークの導入方法として好ましくないことが意見の対立につながっています。 今日はOP_CTVの概要と論争となっているポイントを整理し、個人的な意見も交えながら現在の論争がビットコインの将来にどのような影響を与えうるかを考察します。 TAPROOT導入時のおさらい Taprootの導入にあたって、2017年にユーザーの大半が支持したSegwitの導入にマイナーが抵抗したことを踏まえ、導入に際してマイナーに依存しないソフトフォークのアクティベーション方法

他にもコベナンツを実現する方法としてAnyprevout(Sighash_Noinput)やOP_Vault、OP_CATなどがあります。これらの中でも支持には差があり、中でも特にOP_CATは賛否が強く分かれます。
2023年はビットコイン開発への関心が高まった1年だった
今年も1年を振り返る時期になってまいりました。私は久しぶりの海外旅行やカンファレンス登壇などで充実させた一年でした。皆さんの2023年はどうでしたか? 先週、読者様から以下のようなリクエストが寄せられていました。 Bitcoin Optech Newsletterの2023年まとめ(https://bitcoinops.org/ja/newsletters/2023/12/20
)を読みましたが、ソフトフォーク提案が様々あり、どのOPコードがメインで議論されているかなど、開発の方向性がよく理解出てきていません。
今年の開発の総括や、来年以降の展望などこちらでもおまとめいただけると大変ありがたいです。 ちょうど年の瀬で振り返りに最適な時期でもあるので、今日は今年のビットコイン開発をまとめ、そのうちいくつかのトピックについて来年の予想をしていこうと思います。他にもご質問やご要望などあれば歓迎致しますので、どしどし教えていただければ幸いです! ・たくさんの新型L2が乱立、ソフトフォーク議論が再燃 ・粗雑なプロトコルも複数登場、議論の的に ・ライトニングはLSPの時代へ本格突入
2023年のまとめ記事でこれらの提案についてそれぞれ短くまとめました。
ArkのみならずBitVMなどにもメリットのあるOP_CATがこれほど警戒される理由の根底にはマイニングの分散性に対する危機感があります。今日はそんなOP_CATに対する反対意見、特にMEVに対する警戒を取り上げてビットコインの複雑性に対する解像度を上げていきましょう。
・OP_CATはビットコイン最初期に無効化されたプリミティブゆえに強力な機能
・反対派の挙げる最大の理由であるMEVとは
・現状でさえMEVにつながるメタプロトコルが開発されている以上、それを圧倒的に加速しかねないOP_CATは諸刃の剣である
