2021年7月9日 4 min read

マイナーの分散と降伏

マイナーの分散と降伏
Photo by Kanchanara / Unsplash

過去1週間をオンチェーン分析と共に振り返りながら、今後のビットコイン市場の展望を考察してみます。

ビットコインを分析をしているものにとって、この数日間は非常に興味(ある意味感慨)深い期間となりました。まずは中国のマイニング禁止令、そして、それに伴うコイン採掘難易度の歴史的暴落です。

図1は2020年以降の採掘難易度と価格のチャートです。一目で分かる通り、直近で25Tあった難易度が14.3Tまで下がっています。この下がり幅はビットコイン歴史上最大と言われています。先週時点でビットコインのトランザクションをされた方は、通常よりも送受信にかなり時間がかかったのではないでしょうか。

中国の禁止令に伴い、価格は50,000ドル近辺から30,000ドルまで暴落し、多くの市場参加者がパニック売りやロスカットを経験しています。現状、ビットコインの価格だけを見ると、5月から続く仮想通貨市場の冷え込みは好転しているようには見えません。

しかし、ブロックチェーンの動きを分析すると違う景色が見えてきます。筆者は今回のダウントレンドを非常に好ましいイベントだと捉えています。

一つ目の理由はマクロ・長期的な観点でみた「マイナーの分散」です。ビットコインのマイニングパワーが一極集中されている、ということは、問題視され続けていました。(直近のTaprootアクティベーションもノードが完全に分散されていれば、ここまで議論が大きくならなかったでしょう。)

図2で確認できるように、現在ハッシュパワーの6割近く(詳細は諸説ありますが、過半数はまだ中国にあるとみていいでしょう)は中国で生成されており、特にビットコイン・アンチはこの市場構造に異議を唱えることが多々ありました。

*文字数の関係から詳細は省きますが、マイナーの多くは個々のインセンティブをベースに動いているので、CCPが「ビットコインを止める」リスクなどは、実際には非常に少ないと筆者は考えています。

今回の中国政府の動きにより、中国に拠点を置く多くのマイナーは国外へマイニング機器、エネルギー供給元、マイナープールを移動することを余儀なくされています。これによりマイニングノードの分散がさらに進んでいくと期待されています。

二つ目の好ましいイベントは、「マイナーの淘汰」です。ビットコインのブロックリワードは現在6.25BTC(+トランザクションフィー)ですが、マイニングの機器やエネルギーの多くは米ドルや人民元などの法定通貨で取得しなくてはいけません。

このため、ビットコインの価格が上がれば上がるほど、どんなマイナーでも収益が立てられるようになり(適当な機材を買ってもビットコインが高騰していると利益になるため)、価格が下がるほどシビアな資金管理や潤沢なバランスシートが求められるようになります。

結果、今回のような売り手優勢市場の場合、短期的なキャッシュが必要なマイナーが淘汰され、売り圧力と難易度が一時的に下がることになります。 (生き残ったマイナーは資金が潤沢な企業がメインなので、コイン売却の必要がなく、売り圧力は抑えられたままの状態に入ります。)市場からコインがなくなると、需要供給のバランスから自然と価格が回復・上昇していきます。

この市場サイクルは図3にある、「ディフィカルティ・リボン」と呼ばれるインジケーターで確認をすることができます。過去難易度が下がったタイミングで売り圧力が下がり、その後価格が好転していることがことがわかります。ある意味、ビットコインの難易度調整は「価格の先行指標」と言えるでしょう。

こうしたサイクルを過去10年以上繰り返しながら、ビットコインのネットワークは成長してきました。ビットコインが「ゲーム理論の具現化」と呼ばれる所以です。

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