過去1週間をオンチェーン分析と共に振り返りながら、今後のビットコイン市場の展望を考察してみます。
ビットコインを分析をしているものにとって、この数日間は非常に興味(ある意味感慨)深い期間となりました。まずは中国のマイニング禁止令、そして、それに伴うコイン採掘難易度の歴史的暴落です。
図1は2020年以降の採掘難易度と価格のチャートです。一目で分かる通り、直近で25Tあった難易度が14.3Tまで下がっています。この下がり幅はビットコイン歴史上最大と言われています。先週時点でビットコインのトランザクションをされた方は、通常よりも送受信にかなり時間がかかったのではないでしょうか。

中国の禁止令に伴い、価格は50,000ドル近辺から30,000ドルまで暴落し、多くの市場参加者がパニック売りやロスカットを経験しています。現状、ビットコインの価格だけを見ると、5月から続く仮想通貨市場の冷え込みは好転しているようには見えません。
しかし、ブロックチェーンの動きを分析すると違う景色が見えてきます。筆者は今回のダウントレンドを非常に好ましいイベントだと捉えています。
一つ目の理由はマクロ・長期的な観点でみた「マイナーの分散」です。ビットコインのマイニングパワーが一極集中されている、ということは、問題視され続けていました。(直近のTaprootアクティベーションもノードが完全に分散されていれば、ここまで議論が大きくならなかったでしょう。)
図2で確認できるように、現在ハッシュパワーの6割近く(詳細は諸説ありますが、過半数はまだ中国にあるとみていいでしょう)は中国で生成されており、特にビットコイン・アンチはこの市場構造に異議を唱えることが多々ありました。

*文字数の関係から詳細は省きますが、マイナーの多くは個々のインセンティブをベースに動いているので、CCPが「ビットコインを止める」リスクなどは、実際には非常に少ないと筆者は考えています。
今回の中国政府の動きにより、中国に拠点を置く多くのマイナーは国外へマイニング機器、エネルギー供給元、マイナープールを移動することを余儀なくされています。これによりマイニングノードの分散がさらに進んでいくと期待されています。
二つ目の好ましいイベントは、「マイナーの淘汰」です。ビットコインのブロックリワードは現在6.25BTC(+トランザクションフィー)ですが、マイニングの機器やエネルギーの多くは米ドルや人民元などの法定通貨で取得しなくてはいけません。
このため、ビットコインの価格が上がれば上がるほど、どんなマイナーでも収益が立てられるようになり(適当な機材を買ってもビットコインが高騰していると利益になるため)、価格が下がるほどシビアな資金管理や潤沢なバランスシートが求められるようになります。
結果、今回のような売り手優勢市場の場合、短期的なキャッシュが必要なマイナーが淘汰され、売り圧力と難易度が一時的に下がることになります。 (生き残ったマイナーは資金が潤沢な企業がメインなので、コイン売却の必要がなく、売り圧力は抑えられたままの状態に入ります。)市場からコインがなくなると、需要供給のバランスから自然と価格が回復・上昇していきます。
この市場サイクルは図3にある、「ディフィカルティ・リボン」と呼ばれるインジケーターで確認をすることができます。過去難易度が下がったタイミングで売り圧力が下がり、その後価格が好転していることがことがわかります。ある意味、ビットコインの難易度調整は「価格の先行指標」と言えるでしょう。

こうしたサイクルを過去10年以上繰り返しながら、ビットコインのネットワークは成長してきました。ビットコインが「ゲーム理論の具現化」と呼ばれる所以です。
さて、ここで図3の黄色背景部に注目をしていただきたいのですが、5月前半にマイナスの難易度調整が入ったにもかかわらず、価格は下がり続けています。この状況を最後に考察してみたいと思います。
これは売り勢力が買い勢力よりも規模が大きいことが直接的な理由ですが、この売り手勢力の分布図をオンチェーンで分析してみます。
図4にある「CDD」と呼ばれるインジケータは、その日に起こったコインのトランザクション数をUTXOの最終更新日で掛け合わせた指標です。この指標を確認することで「ビットコインの長期保有者がコインを手放ししているか」が分かります。CDDは年初から下がり続けているので、ビットコインの長期保有者は総じてコインを動か(売却)していないことが分かります。

一方、図5にあるホエールウォレット(ここでは1000BTC以上をホエールの定義とします)を見ると逆に3-4万ドルを超えたあたりから減少が始まっていることがわかります。CDDとは逆で、この指標が下がっていることは利益確定した大口投資家がコインを放出していることを意味します。

Ruffer Investmentが7.5億ドルの利益を出した直後に、ビットコインを売却をしたことからも見て取れますが、長期保有者のビットコイナーと直近でクリプト市場に入ってきた大口投資家の行動原理が大きく違うことが分かります。(例えば年間10%の利益で「優秀」とされるファンドマネージャーは数年単位でビットコインを保有する必要はありません)https://cointelegraph.com/.../uk-investment-manager-sells...
まとめると、今回は中国の禁止令によるマイナーの売り、その他投資家の利確に加えて、大口投資家が売り勢に加わっていたことで、価格の回復に通常よりも長い期間を要していると言えるでしょう。
今後数週間で市場はある程度落ち着いて、回復の兆しが見えたタイミングで大口の投資家もまた戻ってくると予想されています(機関投資家のサマーバケーションとかぶる場合、市場の加速は9月ごろまで伸びるかもしれません)。
*この記事は情報提供のために執筆されているものであり、投資活動を勧誘又は誘引するものではありません。また、取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。暗号資産の売買は自己責任でお願い致します。
*この記事はデータの入手可能性と分析再現性を理由に、法定通貨を米ドルで表記しています。