2011年9月に「マイニングとビットコインの未来」というタイトルで、マイニングに関する様々なデータを見ながらビットコインの未来について考察をしましたが,あれから1年半ほど経過しました。今回は続編ということで,マイニングに関するデータを見ながら考察していきたいと思います。
マイニングマシンの性能の推移
最近ではハッシュレートが200 TH/sを超えるマイニングマシンがでてきました。ハッシュレートとは1秒間あたり何回のハッシュ計算ができるか表す指標です。ちなみに2023年1月現在で全世界のマイニングマシンのハッシュレートを合計すると250,000,000 TH/sになります。様々なマイニングマシンについてこちらのサイト(https://www.asicminervalue.com/)にまとめられています。
マイニングマシンを稼働させるときの維持費の大半を電気代が占めます。したがって,消費電力あたりのハッシュレートを計算するとマイニングマシンのコストパフォーマンスを比較することができます。「マイニングとビットコインの未来」ではマイニングすることができるSHA256のハッシュ計算が可能なマイニングマシンにしぼり,消費電力あたりのハッシュレートを2020年までのデータでまとめました。2021年1月現在までの状況も見てみたいと思います。

黒いプロットが2020年1月までのデータ,赤いプロットが現在までのデータです。2020年まではムーアの法則に従ってほぼ18ヶ月で2倍のペースで伸びていますが,最近はペースが減速傾向にあります。2020年5月11日にマイニング報酬が6.25 BTCに減少したことや,世界的な半導体不足,ビットコイン価格の下落などが影響しているのでしょう。
ハッシュレートの推移
ビットコインネットワークに参加しているマイナーのハッシュレートは2023年1月現在で250,000,000 TH/sですですが,2018年より伸び続けています。Blockchain.comよりリニアスケールとログスケールで示しています。マイニングの参加者数やマイニングマシンの性能向上によってこの数字は伸びていきます。
ビットコインの価格が暴落するタイミングなど,度々大きなハッシュレートの低下が起きていますが,着々とハッシュレートは伸びています。マイナーはマイニングマシンの初期投資が十分に回収できた後は,少しでも電力効率が良いマイニングマシンに乗り換えていきますので,ハッシュレート伸びていきます。
リニアスケールで見ると直線的に伸びているように見えますが,ログスケールで見ると少しずつ伸びるスピードが減少していることがわかります。マイニング報酬の半減期の効果で,新規参入または追加の設備投資の勢いは落ち着きつつあることを示しているともいえます。


ビットコイン価格とマイニングのコスト
以下のグラフは1BTCをマイニングするのに全マイナーが支払った電気料金(USD)の推定値と1 BTCの価格(USD)との関係を示したもので,https://en.macromicro.me/charts/29435/bitcoin-production-total-cost より掲載しています。電力消費の計算はケンブリッジ大学によるChembridge Bitcoin Electricity Consumption Index データを利用しています(いつかこれについても深堀りしたいと思っています)。当然のことながら,マイナーはマイニングで得られる将来的な利益が支払う電気料金などの運用費や設備に関わる費用が上回る見込みがある場合のみマイニングに新規参入します。結果的に市場原理により必然的に1BTC分の報酬が得られるマイニングにかかる電気料金と1BTCの価格は近い値となります。
ところが,ビットコイン価格が高騰する局面では新規の設備投資が追いつかなかいことや,その後の価格下落に備えるため,一時的に競争率が低くなり,必要な電気料金とビットコイン価格の乖離が起きます。このようなときには一時的に大きな利益が得られる可能性が高いといえます。
2022年後半からは関係が逆転する時期もありながら,平衡状態に収束しようとしていることがわかります。2024年に起きる次の半減期後の動きに注目したいところです。

マイニング報酬とトランザクションフィー
マイナーはマイニングに対してマイニング報酬とトランザクションフィーを得ることができます。マイニング報酬は1ブロックのマイニングに対して決められた報酬となり,2023年の時点では6.25 BTCで,約4年に一度半減され,2024年2月に3.125 BTCになることが予定されており,マイナーにとっては少しずつ厳しい状態となります。
一方で,トランザクションフィーは1ブロックに含めたトランザクションの手数料を集めたものになります。ビットコインを送金するときには手数料を設定しますが,高い手数料を設定したほうが,早く送金が処理されます。通常は1 USD以下で推移していますが,ビットコイン価格が高騰しているときには取引が混み合い手数料も高額になります。ビットコイン価格が急上昇した2021年4月には$60程度になりました。普段は銀行の送金手数料よりも安く,取引が盛んに行われるときには手数料が自動的に調整されるところがビットコインの面白いところです。
将来マイニング報酬が減っていく中でマイナーはトランザクションフィーで収益を得る必要が出てきます。実際にマイナーが得る収益のうちトランザクションフィーの割合の推移を計算してみると,次のような推移をしています。ビットコイン価格が高騰している期間を除くと,トランザクションフィーが占める割合が少しずつ高まっていることが分かります。
マイナーがトランザクションフィーで十分な収益を得るためには2つの条件が必要です。1つ目はビットコインの利用者が増えることです。小口決済にはライトニングネットワークを使う流れにはなりますが,ビットコインがベースになっています。ビットコインが法定通貨のように使われる世界になり,日常の決済に使われるようになれば,多くの取引が発生することになります。2つ目の条件としては1つのブロックに多くのトランザクションを詰め込めるようにすることです。これまでのアップデートでトランザクションのデータサイズは圧縮されてきましたが,スケーラビリティを確保するためにも今後さらなるアップデートが必要といえるでしょう。

まとめ
本記事ではマイニングという切り口で現在までの様々なデータを見ていきました。非中央集権の仕組みであるにも関わらず,市場原理がうまく働き,10年を超える期間,巨大な一つのシステムとして成り立っており,法定通貨として採用する国が現れるほどになってきました。
データだけを見ると,システムとしてもエコノミーととしても急成長から安定した成熟した時期に入るようにも見えてしまいます。しかしながら,実際にはまだ私たちの生活に浸透しているとは言えないため,今後さらに大きな成長をする可能性を秘めているとも言えるでしょう。将来どのように変化していくのか非常に楽しみです。