先月Blockware Solutionsというアメリカのマイニング企業が、マイナーのビットコイン価格変動への対応と、それが中長期のビットコイン価格形成に与える影響やパターンについて解説する記事を公開していました。こちらの記事は普段あまり語られることのないマイナーの意思決定や競争環境について説明しつつ、具体的な想定やシミュレーションをしているもので非常に面白かったです。言われてみれば確かに、ということなのですが、自分も一部マイナーの動向について正確に理解してなかった部分もありました。
元記事↓(余裕のある人は是非本文確認推奨)
特に、先日のコロナショックによるビットコインの急激な価格下落や1か月ほどで半減期の到達を控えている中、
・ビットコインは価格の急速な下落に対して本当に生き残れるのか?
・半減期後のマイナーの収益が急速に悪化して問題はないのか?
などの疑問を持っている人も多いと思います。今回はそれについて考えてみます。
ビットコインマイナーによる売り圧
まず基本的な話ですが、マイナーはビットコインの価格形成にとって非常に重要なプレイヤーです。
今の採掘レート(10分で7.5BTC)で一日に1800BTC、一月で54,000BTC(今の市場価格で350億円相当/月)が新規に採掘され、マイナーの手に渡ります。マイナーは電力代や施設、人件費などの支払いの為にこれらのビットコインを売って現金に換える必要があり、これが構造的に市場でのビットコインの大きな売り圧となっています。同時にマイナーは数年単位で長期にビットコインにコミットする必要があり(マイニング機器の投資回収と電力や施設の契約サイクル)、多くのマイナーは将来的なBTCの価格上昇を期待し、手に入れたビットコインの少なくとも一部はビットコインのまま保有しているようです。ここら辺の売り圧の話はビットコイン研究所でも連載してくれている佐々木さんも度々説明していますね。
ビットコイン価格はマイニングの損益分岐点で本当に形成されるのか?
さて、「マイナーによる売り圧」以外にマイナーとビットコイン価格でよく言われることが、「マイニング損益分岐点と価格サポート説」です。
例えば平均的マイナーの損益分岐点が5000ドルだとして、ビットコインの市場価格が5000ドルに近づいてきたとします。このラインを下回ると多くのマイナーが赤字になってしまい営業停止、更なる価格下落やハッシュレートの連鎖が起きかねない、ということで、マイナーやトレーダーはこの損益分岐価格ラインを意識し、出来るだけこのラインを割らないようにする、というものです。まあ色々細かい説のバリエーションは他にもあるでしょうが、概ねこんなところでしょう。要は、マイニングの平均的損益分岐点がビットコイン価格の一つの下限適正価格であり、価格が短期的にそのラインを割ってもそのラインがサポートになって価格は適正値以上まで回復するだろう、というわけです。
ただしマイナーの実際の行動を観測すると上記のような思考モデルは正確ではないようです。
各マイナーの電気代や設備費、人件費などのオペレーション費用が毎月固定だったとします。短期的な投機や市場での混乱(コロナ相場など)でビットコインの価格が下がり始めると、マイナーは固定費を支払う為に手に入れたビットコインの現金化の割合を引き上げる必要が生じます。それが市場でのビットコインの追加の売りプレッシャーになり、売りプレッシャーの連鎖、ビットコイン価格の下落が加速します。