2023年6月2日 6 min read

Mempool.spaceの「トランザクションアクセラレーター」はマイニングやメモリプールにどういう影響を与えるのか

Bitcoin 2023カンファレンスではビッグな発表がいくつかありました。その中でも3本の指に入るものにmempool.spaceエクスプローラーを運営するMempool社が「トランザクションアクセラレーター」サービスの提供を開始するという発表がありました。

これはユーザーがMempool社に手数料を払うことで、Mempool社と提携したマイナーが任意のトランザクションを(トランザクション内で支払った手数料に関わらず)次のブロックに入れてくれる、というものです。

このサービスの存在意義について、RBFやCPFPといった方法でトランザクションの手数料を後から追加することができるのになぜ?という声もありました。また、もしもこのサービスの利用が増えてしまうとビットコイン自体に様々な弊害が生まれることを懸念する意見もあります。

この記事では新サービスの概要と想定される影響について情報を整理します。

ビットコイントランザクションの配信と承認

今回発表されたMempool Transaction Acceleration Marketplaceには主に2つの用途が考えられます。「ノンスタンダードなトランザクション」をマイナーに提出して手数料を払うことと、通常のトランザクションの承認を早めることです。それぞれどのような場合でしょうか。

「スタンダードなトランザクション」とは

ユーザーが署名したビットコイントランザクションがマイナーにたどり着くまでには、そのトランザクションがP2Pネットワーク上をノードからノードへと伝播していく段階があります。

しかし、ビットコインノードはどのようなトランザクションでも他のノードに転送するわけではありません。不正なトランザクションでなくても、ノード実装ごとに異なる基準(ポリシールール)に基づいて一部のトランザクションはフィルタリングされてしまいます。

例えばあまりにもサイズが大きいトランザクション(400KB以上など)、経済的合理性に欠ける(スパムの可能性が高い)と疑われるトランザクションなどはネットワークを伝播しにくく、マイナーのノードまで辿りつくことは稀です。そのため、何らかの理由でこのようなトランザクションをブロックに含めてほしい場合、これまでは直接マイナーに提出する必要がありました。

ViaBTCなど一部のマイニングプールはウェブ上でトランザクションを提出するためのフォームを提供していましたが、表向きそのようなサービスを提供していないプールにも採掘してもらいたい場合はコネが必要でした。

また、トランザクションがネットワークを伝播しないということはRBFによって後からトランザクションの手数料を積み増すことができないということでもあります。

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この1週間ほど世間の話題はFTXの信用不安問題で持ちきりですが、ビットコイン開発者の多くは全然違う論争に巻き込まれていました。Bitcoin Coreの次期リリースである24.0において、ノードのポリシーとしてFull RBF (mempoolfullrbf)というものが導入される予定のところ、これに反対する意見が出たためです。 結果的には導入継続という流れになりましたが、このように誰でも意見・議論できることがビットコイン開発における健全性維持の1つの仕組みです。 それでは議論の内容を見ていきましょう。 RBFとは RBFとはReplace-by-Feeの略で、配信したがまだブロック…

Mempool社とマイナーの提携

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