法定通貨と価値が連動して動くとされるステーブルコイン。こちらは日本でも最近発行される企業の株価が堅調に推移するなど、少しずつ知名度が上がってきています。
しかしながら現実的に日本円のステーブルコインが事業規模に乗るのは、正直前途多難ではないだろうかということを今回の記事では書いてみたいと思います。
テザーの圧倒的な強みは米国高金利によって成り立っており、日本では機能しない
まず最初に、ステーブルコインで圧倒的な利益を叩き出している閃光モデルについて確認しておきましょう。
アーサー・ヘイズ氏の最新記事である「Assume the Position」の記事(6月17日に発行)の中では、直近のテザーの利益についてのグラフが掲載されていました。
[図1:テザー社の年間利益推移グラフ]

出典:https://blog.bitmex.com/assume-the-position/
こちらを見ると、2022年からテザー社の利益が桁違いに増えていることが明らかです。
まず、テザー社の利益の源泉について確認しておきましょう。
こちらはテザーの希望ユーザーが米ドルを支払い、テザーはそれに対して同じ額のUSDTを発行します。この時テザーは預かったドルをほぼ全額アメリカの米国債に投資します。
そしてUSDTを手にしたユーザーは、金利を手にすることはありませんが、ドルを米国債に投下したUSDTそのものは、年4%から5%の金利を享受することができます。
つまり、他人の金を米国債に突っ込み、その金利収入を得ることで、これだけの大きな利益を叩き出しているのです。
では、仮に同じ授業を日本で行った場合にはどうなるでしょうか。
日本円ステーブルコインの現実的な収益性
JPY(日本円)のステーブルコインを発行するとしても、その預かったJPYを発行会社は日銀の発行する国債を購入することになります。
そこでどのような金利がつくのかはもちろん発行会社の腕の見せ所ということになりますが、仮にテザー車と同じ構成にするのであれば、1年未満の短期債が80から85%の構成比となります。
現状、同じデュレーション(シンプルに言い換えると「満期までの期間」のイメージです)の日本の国債JGBを確認してみると、およそ0.5から0.65%の金利となっています。
[図2:日本国債と米国債の利回り比較]

米国債との利回りの差は、ざっくり3.4%を超える水準となっており、日本の国債だけでは利益を得ることはなかなか難しい状況です。
同じ10億円を投下したとしても、米国で年間約4,300万円稼げるのに対し、日本では年間約650万円しか稼ぐことができません。
つまり現状では、日本でステーブルコイン事業を発行したとしても、テザーのような圧倒的な利益が現実になるかどうかは、この先の日銀の金利政策次第ということになります。
ステーブルコインを発行する企業の株式は上がらないのか
ここまでで、日本で発行したステーブルコイン自体が米ドルのような利益を生む可能性が小さいことについて述べてみました。
では、日本でステーブルコインを発行する企業の株式自体も大して上がらないという理解になるのでしょうか。