今回はいつもの技術解説記事とは違い、イタリアのビットコインATMでKYCの壁にぶつかった体験記を書きます。また、ビットコインATMの操作感と日本でのビットコインATM事情についても触れます。
2025年9月に、イタリアのローマに行ってきました。目的は旅行だったのですが、現地のビットコイン事情について調べてみると、ローマ市内にいくつかビットコインATMあったので、そのうちの一つに試しに行くことにしました。
ビットコインATM by Shitcoins.club
目的のビットコインATMはShitcoins.clubという会社が運営しているようです(名前が怪しい…)。
Shitcoins.club はリブランドし Bitomat.com と言う名前でも運営しているらしいです。
ビットコインATMを展開する企業として有名で、EU圏では最も多くのATMを設置しているとのことです。

Shitcoins.clubのホームページにあった公式動画をみる限りではKYCは必要なさそうだったので、行ってみることにしました。
ローマの中心的な駅の一つであるテルミニ駅の正面口から徒歩20分程度の場所にあり、街の雰囲気を知るためにもテルミニ駅から歩いていくことにしました。
道中から到着まで: ビットコインATM周辺の街の雰囲気

出発地点であるテルミニ駅のすぐ前の旅行代理店にもCoinFlip Bitcoin ATMというビットコインATMがありました。使い方が分からずATMの前でまごついていると店員の方にずっと見られて気まずかったので、スマホを買いに来た客のフリに切り替えて店を出ました。
テルミニ駅から10分ほど歩くとローマの観光地の雰囲気とは打って変わり、観光客の少ない居住エリアらしい雰囲気になりました。だんだんお土産ショップはなくなり、周りからは英語の話し声が聞こえなくなり海外経験の少ない自分はだんだん不安になってきました。
後から知りましたが、目的地であるBancomat Bitcoin ATMがあるエリアは最近移民が多い地域であり、Web情報でもあまり良くないとされている場所だったようです。店に近づくにつれ、壁の落書きが増え、閑散としたシャッター街にワルそうなにいちゃん達がたむろしており、確かに観光地とは異なる空気を肌で感じていました。

そんな中しばらく歩いていると、突然街角に見慣れた「bitcoin」の文字を発見し、一安心しました。地元の人向けのグロサリー、理髪店、ピザ屋に並んで現れるビットコインATMは街に馴染んではいませんでした。
入店から購入チャレンジまで:KYCの壁

店に入ると目の前に格子があり、格子の奥にビットコインATMがありました。おそらくセキュリティの観点から、店内には基本的に1組しか入れないようにしているのだと思います。格子のドアはロックされて開かず、格子につけられたボタンを押すと洋画の刑務所シーンでよく聞くビープ音と共に格子扉が開きました。

ようやくビットコインATMとご対面。かっこいい。
早速使ってみることにしました。ETHやUSDT、USDCなども購入できるみたいですが、買うのはもちろんBTC。

何か表示されていますがよく分からないですがとりあえず「Accetto」を押しましたが、実はここでKYCが必要という説明がされていたみたいです。
そんなことは知らずにとりあえず5ユーロ札を突っ込んでみると、受取用のアドレスの入力が求められました。おそらくオンチェーンのみに対応しており、Lightningには対応していないようでした。自身のスマホでウォレットを開いてアドレスのQRをカメラに読み取らせると処理が進みました。

しかしここで問題が発生。IDカードの読み取りを求められました。もちろん現地のIDカードを持っておらず、どうすることもできないため、初のビットコインATMでのビットコイン購入は失敗に終わりました。EUが2024年に施行した暗号資産に関する規制であるMiCA規制の影響で、少額の購入でもKYCが必須化されていたようです。(MiCA規制については後述します。)
断念して操作の取り消しをすると返金用の手続き方法とQRコードが記載されたレシートが出てきました。返金手続きの方法を調べましたが、サポートとのやりとりが必要になるなどの手間が掛かるようで、泣く泣く5ユーロの返金は諦めることにしました。
残念な気持ちで外に出ようとすると扉が開かず、閉じ込められてしまいました。気分は『Bitcoiner in Jail』。「まずい、Shitcoins.clubに襲われる」と冷や汗が止まりませんでした。
冷静になって周りを見回すと内側にもボタンがあり、入店時と同様にボタンで外に出ることができました。
MiCA規制とは?:EU圏内の暗号資産規制事情の概要
MiCA規制とは2024年に施行された暗号資産に関するサービス提供や取引に関する包括的な規制です。MiCA規制の施行前は、EU圏内の国ごとに異なる規制が敷かれていたため混乱を招いていました。MiCA規制ではEU圏内で統一したルールを作ることで、加盟国で認可を受けた暗号資産サービスがEU内で展開を促進することを名目として施行が進められました。(規制の必要性に関しての私見は省略します。)
カストディや取引所、スワップサービス運営に関する規制や暗号資産運用の助言やポートフォリオ管理に関しても暗号資産サービス提供者として扱われ、厳しい規制がかかっています。
また、ステーブルコインに関しては特に厳しい要件が課されているのも特徴です。
MiCA規制自体でKYCについての詳細な規定がされた訳ではないですが、MiCAと合わせて語られるトラベルルール(移転のトレーサビリティ規則)においてAML対策を目的とした顧客の本人確認が義務化されています。
日本国内のビットコインATM事情
日本にも過去にはいくつかの企業がビットコインATMを設置していました。
2014年4月頃にRobocoin社製の最初のビットコインATMが設置されたことをきっかけに、2019年前後まで東京と福岡でいくつか設置・運営されていました。
https://www.wsj.com/articles/atm5-1397717476
しかし、当時はビットコイン決済に対応する場所はごくわずかで、またAML/KYC規制の厳格化の波により運用の負担が大きくなり、採算が合わなかったためか一時は消滅状態でした。
一方で、現在日本でもインバウンド向けにビットコインATMサービスを展開している企業があるようです。
外国人観光客の利用を想定し、ICチップ搭載のパスポートで本人確認を行うことでBTC・ETHなどと日本円の両替が可能なようです。日本の居住者の場合、マイナンバーカードで本人確認もとのことなので今度試しに行ってみようと思います。
まとめ
今回はイタリアで5ユーロ吸われて投獄される体験談でした。加えて、日本のMiCA規制の概要とビットコインATM事情について簡単に紹介しました。
サイバーパンク感のあるデザインと滅多にない体験で興奮しましたが、EU圏内での暗号資産に対する締め付けを体感しました。ビットコインATMだけでなく、イタリア旅行先の各所でビットコイン支払い可能なお店を探していましたが、その数は少なく、イタリアでもまだまだビットコインの産業は未発達な印象を受けました。
ちなみにイタリア訪問の目的は新婚旅行で、この間宿泊先に妻を置いて行きました。すみません。
おまけ:道中のフィルム写真
ビットコインATMまでの道中趣味のフィルムカメラで写真を撮りながら歩いていました。
元々ストリートスナップと呼ばれる何気ない街並みの写真を撮るのが好きなので、イタリアの街は心が弾みました。最近はフィルムの価格が高騰し、36枚撮りフィルムが3000円くらいするので気合いを入れて撮りました。
カメラを構えていると現地の方に好意的に話しかけられたりもしたので、コミュニケーションのきっかけとしてもおすすめです。

