本日よりビットコイン研究所に寄稿させていただくことになりました原利英です。
暗号技術とインターネットとが世の中を凄い勢いで変えていっていますね。人々の生き方が大きく変わる時代の転換点、ここに当事者として関われるのってめちゃくちゃ楽しいことだと思います。そんなワクワクを一緒に楽しませて頂くべく、自分が少しは得意な部分でお話をお届けさせていただければと考えています。技術よりの話が多くなるかと思いますが宜しくお願い致します。
さて、今回はテストネット上のビットコインをとりあげてみようと思います。ビットコインは今も開発が続いているプロダクトです。そのため、テストネットと呼ばれる開発者やマイナーが検証を行うためのブロックチェーンが存在します。この上でやりとりされるビットコインをtBTCと呼んで本番用のBTCと区別することもあります(なお、これとEthereum DeFi上のtBTCとは別物です)。今回は、このテストネットBTCに価値はあるのか、ということを考えてみたいと思います。
テストネットとインセンティブ
ビットコインのブロックチェーンネットワークには主に下記の種類があります。
- mainnet - 本物のビットコイン用ネットワーク。ノードはマイナーが運用している。
- testnet - 開発用ネットワーク。ノードは開発者・マイナーが運用している。
- regtest - 開発用の単体ノード。開発者が自身のサーバーで動かして利用する。
regtestは自身で単独ノードを動かす方式なため、好き放題ビットコインを掘れます。ですがネットワークを形成しているわけではないため本格的なテスト環境としては物足りなさがあります。最近では、signetと呼ばれるものもでてきましたがこれについては後述します。
マイナーがmainnetを運用するインセンティブはマイニング報酬です。ブロックを掘り当てると2021年5月現在6.25BTCのベース手数料とそのブロックに含まれるトランザクションに付加された手数料とが報酬として手に入ります。
では、testnet (テストネット) を運用するインセンティブは同様にマイニング報酬なのでしょうか。テストネットBTCはあくまでウォレットの開発者がテスト送金に利用するものです。こうした開発者達は、まずテストネットBTCをどこかで手に入れる必要があります。
テストネットBTCは取引所に上場しているわけではなく、Faucetとよばれるサービスを利用して手に入れます。例えば2013年から稼働しているFaucet (https://kuttler.eu/en/bitcoin/btc/faucet/)は添付画像のようなイメージです。見て分かるとおり、有志開発者が動かしているようなものです。他にもいくつかFaucetがありますが大抵長続きせず、気がつくと消滅しています。私もブックマークしていたFaucetが殆どなくなっておりビックリしました。
これは何故かというと、ビットコインが成し遂げた高度なインセンティブ設計がテストネットでは機能していないためですね。ある意味自明なことではあります。こうしたFaucetサービスを運営するためには自身でマイニングをする必要がありますが、ノード用サーバーだったりマイニング装置だったりを動かすのに費用がかかります。
それにも関わらず頑張ってマイニングしたテストネットBTCを売れるわけではありません。ひたすら売上げのあがらないサービスなわけです。これでは他に理由がないと長続きしません。では、どういったインセンティブでFaucetサービスを運用するかというと、