ガバナンストークンに関しては肯定派、否定派両方存在しますが、自分個人的には悲観的に見ている部分が大きいです。投票の美人投票化/もしくは低投票率の問題、そもそも投票するインセンティブに対して市場規模が大きすぎる、などの批判も出来ますが、そもそもの根本的な問題としてガバナンストークンの保有が偏り過ぎており、投票が形骸化しているのが最も大きな問題だと思っています。
どんなに投票インセンティブ、もしくは罰則をつけようとしたり、投票によるガバナンスを推進したとしても、運営が大半を持っているトークンはそもそも分散化されていないですし、少額保有者がそもそもガバナンス投票に参加するインセンティブが皆無になってしまいます。
では実際今の時点で、最近流行りのいわゆるDeFiガバナンストークンの保有がどれくらい偏っているのか調べてみました。
メソッド
- EthplorerのAPIを使って、Ethereum上で発行された各トークンのTop1000保有アドレスと保有額のリストを取得
- アドレスの保有残高と全体の供給量を基に、シンプルにTop5、Top10、Top20、Top100の保有シェアを計算
- 対象とした11のトークンは、CoinGeckoのDeFiトークンランキングから市場規模が大きいガバナンストークンと思われるものを上位からマニュアルに抽出
それぞれのトークンを細かく調べているわけではないので、もしかしたらガバナンストークンと呼ぶのにふさわしくないものも混じってる可能性はあり
注意点
- ブロックチェーン上のアドレス=保有者では必ずしもない。アドレスの管理者は複数いる可能性があったり(VCやファンドなど)、また複数アドレスを同じ人物が管理している可能性もある。
なので、保有アドレスが集中しているから必ずしも集権化されている、もしくは逆にアドレスごとの保有量がなだらかに分布していても本当に分散化されているかの証明は難しい。ただし1アドレス≒1主体という大体の仮定を置くことで、特定のコインの保有者の偏りや分散状況は何となくつかめると考える。 - プロジェクトによってはべスティング期間を設けており、契約でコインの移動を数年間出来ない、投票には使えない、もしくは毎月一定数しか動かせない、というような条件設定をしている場合がある。その場合、特定のアドレスに保有が偏っているが事実上問題にならない、などの反論をされる場合がある。こういう条件はブロックチェーンのデータだけ見ててもわからず、各プロジェクトの詳細を一つ一つ確認する必要が本当はある
が、工数がかかりすぎるので、今回はあくまでブロックチェーン上の概算を見てみる
3.最大保有アドレスが人間や会社ではなく、コントラクトの場合がある。その場合、ここに入っているコインはブロックチェーン上で中空に浮いているような形になり、誰も直接的に管理していない場合がある。
それによりトップ5の保有アドレスに偏りが見られる場合があるので、本来はこのコントラクト部分の保有アドレスは保有者シェアから除外する方が適当
単純に最大保有アドレスを一から数えてシェアを計算すると、上記のような理由で現実より保有、つまり投票力が偏っているように見えてしまう可能性がある。
正確に上記の全てのバイアスを取り除くのは大変なので、もう少し簡単な概算方法を試みてみた。全体のアドレスをトップ1から全て計算したものとは別に、トップ3の保有アドレスを除外してシェアを計算し直すバージョンを参考に作成してみた。
個別のコインの事情を考えないでトップ3を一律に外すのは少し雑だが、コントラクトにロックアップされているもの、もしくは数年単位で動かせない、投票に使えないことになっているトークンなどの影響を一律に大部分カットして、その上でその他のコインの分布がどうなっているか見ることで、より現実的な数値が測定出来る可能性がある。
結果
全アドレス使用バージョン
- 11の上位ガバナンストークンのうち、7つはトップ5のアドレスが50%以上のトークンを保有している
a.Bandは9割近く、Yearn、COMP、AAVEはトップ5だけで6割以上を占めている