国が法定通貨として強制通用させるトップダウン型とは対照的な草の根の啓蒙活動を介したボトムアップ型のアダプション現場で見たもの、感じたこと
前回はビットコイン・レイクのコミュニティリーダーの奮闘で、パナハッチェルと周辺地域でビットコイン決済が急速に普及していることを紹介しました。ここでのビットコイン決済は全てライトニングネットワーク上で行われる、いわゆる、ライトニング決済です。
ライトニングネットワークの威力
2017年バブル期には、ビットコインの送金手数料が高騰し、ビットコインは決済手段にはなり得ないとよく言われたものです。2021年半ば、プチバブルと中国でのマイニング取り締まり強化で一時再高騰しましたが、SegWitやバッチ処理の普及で、メモリープールが逼迫する頻度は激減し、オンチェーン、つまり、ベースレイヤーであるビットコインネットワークの手数料は低位安定しています。
ただ、手数料が安くても、日常の買い物にオンチェーン決済は向きません。決済に時間を要するためです。手数料もいずれはビットコイン価格とともに上昇は不可避でしょう。将来的には、ベースレイヤーは時間とコストがかかってもセキュリティとファイナリティが求められる決済に利用する、例えるなら全銀ネット、日銀ネット、Fedwireのようなものになると言われています。
日常的な決済はセカンドレイヤーであるライトニングネットワークが既にデフォルトになりつつあります。ライトニングはVisaネットワークみたいなものですが、決済は即時、手数料はゼロに近いです。クレジットカードも支払う側から見ると、そう見えるかもしれませんが、実際には店舗が1~5%程度の決済手数料を負担しており、顧客がPOSにカードを通して支払った代金が店舗に渡るのは数週間後です。
日本では決済手数料は店舗が負担しますが、海外、特に途上国では顧客に転嫁されることも多いです。さらに、クレジットカードを海外で使うと海外利用手数料として1.5~3%程度が課されます。
ライトニング決済導入により、店舗は手数料削減と入金サイクルの大幅短縮というメリットを享受できます。クレジットカード会社と契約できない銀行口座を持たない事業者は、現金以外、オンラインの決済手段を初めて提供できるようになります。支払う顧客側も海外では手数料を節約できます。
ここ1~2年のライトニングの進化は目を見張るものがあります。決済可能な金額は数千円から数十万円に伸び、決済フローも従来のインボイスをQRコード化してカメラで読み取る方式に、NFCカードをかざして読み取る方式が加わり、ますます時短になりました。
以下動画はタッチ決済対応のVisaとライトニングの決済スピード対決です。約3秒差で左側のライトニングの勝ちです。ライトニングネットワークを知らず、未だにビットコインは遅くて決済には使えないと言っている人に見せてあげてください。
50回超のライトニング決済を体験してみて
私は今回エルサルバドルとグアテマラ合わせて10日間の旅行中、50回以上のライトニング決済を行いました。普段から公私ともにライトニング決済を多用していますが、リモート決済がメインで、送受金の相手はライトニングに通じたビットコイナーです。しかし、今回は対面決済がメイン、しかも相手はライトニングはおろか、ビットコインについてもよく知らない人たちでした。
普段とは違うシチュエーションで初めて経験したトラブル、改めて実感したライトニングの利便性、そこから見えてきた理想のライトニングウォレットの要件などを共有させていただきます。