国が法定通貨として強制通用させるトップダウン型とは対照的な草の根の啓蒙活動を介したボトムアップ型のアダプション現場で見たもの、感じたこと
前回はビットコイン・レイクの活動事例として、廃油で発電した電気でASICを稼働するマイクロマイニング施設をご紹介しました。
本記事では、ローカルビジネスへのビットコイン導入支援についてご紹介します。
ビットコイン循環経済圏構築の第一歩
ビットコイン循環経済圏を創るには、まず住人にビットコインを行き渡らせる必要があります。銀行口座を持たない人も多く、取引所で購入してもらうわけにもいきません。現実的な方法は「稼ぐ」です。
ビットコイン・レイクが活動拠点とするパナハッチェルは、観光客を相手に飲食店、お土産店を経営したり、トゥクトゥクやタクシーなど移動手段を提供する人が多いので、顧客からの支払いをビットコインで受け取れば、地域に滞留するビットコインを手っ取り早く増やせます。
驚異的スピードで導入が進むビットコイン決済
下図はパナハッチェル中心部の地図です(出典:ビットコイン・ビーチ・ウォレット)。オレンジ色のピンはビットコイン払い可能な商業施設を示しており、2022年11月時点で約60あります。
ビットコイン・レイクが始動した2022年1月にはゼロだったのが、10ヶ月で60施設まで増えました。
ちなみに、2021年9月にビットコインを法定通貨に採用したエルサルバドルでは、2023年1月時点で首都サンサルバドルでは約40、ビットコイン・ビーチとして知られるエル・ゾンテでは約30の施設でビットコイン決済が可能です(BTC Map)。
また、2022年3月にビットコインを実質法定通貨に採用したスイスのルガーノ市では、2022年12月時点で125施設がビットコイン払いを受け付けています(The State of Bitcoin Adoption in Lugano — December 2022)。ルガーノ市が9ヶ月という短期間のうちにビットコイン決済を急拡大できた裏には、市政府とBitfinex/Tether社という強力な主導力と資金力、さらには2020年に地域経済活性化を目的として導入されたLVGAというスイスフランにペッグした独自ステーブルコインの普及活動の一環で、暗号通貨決済が可能なPOSが既に多くの商業施設に配布されていたという事情があります。
エルサルバドルやルガーノ市と違って、法定通貨ではないビットコインを限られた資金と人的リソース(実質コミュニティリーダー1人)で、ここまで普及させたビットコイン・レイクは驚異的です。
以下、ビットコイン・レイクが実践する地元ビジネスへのビットコイン導入支援をご紹介します。