こんにちは!イーロン・マスク率いる政府効率化省(DOGE)が、米国の保有する金準備残高の監査を要求している件が話題となっています。
米国財務省が公表するフォートノックスの金準備は、公式に8,133トンとされていますが、1974年の部分的な調査以降、完全な実地調査が行われていないというのです。
[米政府が備蓄する「金はまだあるのか?」マスクが監査を要求](https://news.yahoo.co.jp/articles/75b37cc8df1bca9380d31969a5bfd81c93e340b5)
この提案を起点として、フォートノックスのゴールドで欠損が出た場合はどうなるでしょうか?
筆者は、欠損が出ても出なくても、米国のビットコイン国家備蓄戦略の実現可能性が高まることにつながると考えています。
今回の記事では、問題の根源が人間による組織の限界によるものであること、そして人の介入を排除した信用システムの構築に成功したビットコインが、今よりも遥かに高い評価を得る日が間近に来ていることをお伝えしたいと思います。
フォートノックス問題はゴールドの偽造技術向上で人々が疑心暗鬼になったことが背景
今回のフォートノックス騒ぎは特に目新しいものではありません。ネット上の噂話では、米国政府が金の誘惑に負け、他国の預かりゴールド資産に手をつけるなどの話題が多数出てきます。
ドイツに至っては、アメリカに預けてあるゴールド残高の確認が確実に取れなかったことを踏まえ、2020年には米国に預けてあるゴールドの2割程度を自国へ輸送しています。
結局のところ、米国の金準備残高に関しては、1974年の部分監査以降実地調査が行われていないことが時代を跨ぎ、人々に疑心暗鬼をもたらし続けているのです。
この構造的な背景には、ゴールドは「物理的に金塊の存在を証明する方法の難易度とコストがめちゃくちゃ高い」という課題が横たわっています。
というのも、ゴールドの偽造技術も進化を続けているからです。
スイスの精錬大手バルカンビのミハエル・メサリク最高経営責任者(CEO)は「最新の偽造は極めて高度に行われている」と指摘しています。偽造ゴールドの発見は2,000本程度にとどまっているものの、現実ははるかに多くの偽造品が出回っている公算が大きいとコメントしています。
[世界市場に「汚れた金塊」出回る、精巧な偽造印で違法品を洗浄](https://jp.reuters.com/article/world/-idUSKCN1VJ0G5/)
なお、ゴールドの偽造でポピュラーな方法の一つが、タングステンを金でコーティングした偽の金塊を作るというものです。
タングステンが偽造に使われる理由は、その物理的特性にあります。タングステンの密度(19.25g/cm³)は金の密度(19.32g/cm³)とほぼ同じであり、単純な重量測定では見分けがつかないのです。
だからこそ、フォートノックスといった大規模な金庫に保管されている金塊にも、同じ偽造リスクが潜んでいるのではないかと懸念が広がるのです。
偽造を見破るためには費用も時間も高い!
だったらフォートノックスに積まれているゴールドを全量検査すれば問題解決じゃん!・・・となりそうなものですが、今度は「偽造を見破るための技術的なハードルと費用が高い!」という問題が出てきます。
例えば、X線蛍光分析や超音波検査などの方法を使えば、金塊の表面と内部の元素組成を非破壊でも調べることができます。
しかしこれらの方法は専用の機器と専門知識を持ったスタッフが、1つ1つの金塊を丁寧に調べていく必要があります。
フォートノックスのような施設に保管されている金塊の総数は数十万個とも言われており、全在庫を定期的に検証することは現実的ではありません。
例えば、1個の金塊(約400トロイオンス、12.4kg)を検査するのに数分かかると仮定しても、147.3百万トロイオンス(約368,250個)の金塊をすべて検査するには、数年単位の時間と数百万ドル規模の予算が必要になりそうです。
これらの事情もあり、アメリカ政府が1974年にフォートノックスの監査を行った際には、限定的なサンプル調査に留まり、全在庫の詳細な検証は行われませんでした。このように、ゴールドの真正性を保証するには技術的にも経済的にも大きなコストがかかり、効率性が著しく低いのです。