選挙イヤーの2024年は、歴史的な転換点になりそうですね。
米国はトランプ大統領が圧勝し、日本は投票率の低下からシルバー民主主義の定着が既定路線で進んでいます。
先進国による国家主導のバラマキ財政は、歯止めがかかるどころか、これから加速していく一方でしょう。
消し飛んだ財政規律の緩みに対し、欧州の中央銀行は静かに、しかし確実な対応を進めているようです。その動きとは、各国GDP(国内総生産)の約4%相当の金を保有するという暗黙の「新しいルール」です。
当記事では欧州の中銀が水面下で進めている動向を俯瞰しつつ、個人にとってはビットコインを適正量で保有することでリスクヘッジにつなげることができるのでは?という可能性について考えてみたいと思います。
金本位制へ回帰するユーロ圏
ユーロ圏では2008年の金融危機以降、加盟国の異なる事情もあり、財政規律維持に苦心してきました。こうした中、EUは金保有という「静かな防衛線」を築き始めている可能性があります。
特に東欧諸国を中心に、GDPに対する金保有比率を高める動きが加速しています。特に以下の記事が象徴的でした。
「2024年10月、ポーランドの元財務大臣コンラッド・ラツコフスキー氏は、ユーロ圏全体でGDPの4%をゴールド準備とする新しい金本位制への移行準備が進んでいることを示唆」
11月9日の Money Metals Exchange 記事(こちら)にて報道された内容です。
以下は記事内に掲載されたグラフをお借りしたものです。
グラフの説明:
- 黄色の縦棒:2024年10月時点のゴールド保有量(単位はトン数・左軸)
- 黒色の細い縦棒:2023年のGDP額(単位はBillionドル、右軸)
- ピンク色の縦棒:1990年から2008年の間に各国中銀が売却したゴールド量のトン数
執筆者のJan氏は、いくつかの中銀に連絡して「欧州内で近保有量をGDP比で揃える取り決めがあるんか?」と聞いて回ったようですが、それらには0回答だったとのこと。
ところが2024年10月に、冒頭のラツコフスキー氏発言があり記事を公開したとのことでした。
事実2018年以降、ポーランドは317トン(+208%)、ハンガリーは107トン(+3376%)、チェコは32トン(+141%)とゴールドの保有量を一気に積み増しています。
せっかくですから、最新のゴールドの保有トン数と欧州各国のGDPを人工知能に読み込ませ、ゴールドの現在価格(2,700ドル/Toz)を乗じ、GDP比率を作図してもらいました。
---
グラフの説明:
● 縦軸
- 左側:GDP比(紫色の棒グラフ、単位:%)、 各国の金保有額をGDPで割った比率を表示
- 右側:金保有量(緑色の棒グラフ、単位:トン)、 各国の実際の金保有量を示す
例:ドイツは約3,000トンの金を保有
● 4%ラインについて
- オレンジ色の点線したもので、ラツコフスキー氏が言及した目標値
- 現状、多くのEU加盟国が水準を上回っているが、一部は未達
● 特徴的な点
- 南欧諸国(ポルトガル、イタリア)のGDP比が高い
- 経済規模の大きいドイツ・フランスは保有量が多いものの、GDP比では中程度
- 東欧諸国は相対的に低い水準だが、急速に積み増している
---
ポーランドの水準は3.88%ですから、ゴールド価格が2,800ドルまで上昇すれば、ラツコフスキー氏の言う4%到達に到達することになります。
金本位制に戻る・・・かどうかはわからないとしても、EU加盟国がゴールドの保有量を増やす動きになっていることは事実です。
参考までに、以下は2024年にゴールド保有量を増やした上位5カ国のランキングです。ポーランド・インド・トルコ・ウズベキスタン・チェコの順ですね。
個人的にはポーランドとチェコの急速な増量の理由が分からずにいましたが、EU内で協調の動きがあるなら、その動きも納得です。
なおトルコはEU加盟を希望しています。もしゴールドの残高を増やしている背景がEU加盟のためなのだとすれば、一応の筋は通ります。
こうして見ても、EU加盟の明文化されていない条件にゴールドの保有率が入っているという考え方には、一定の根拠があるように思えます。
さて欧州がゴールド保有を目指しているのが事実だとすれば、これはユーロにとって悪くない戦略であると考えます。
現状のユーロは、圧倒的な決済通貨である米ドルと、徐々に人口パワーが爆発する中東を味方に引き入れつつある人民元に対して押され気味です。
仮にユーロのポジショニングを世界にアピールしていく意図があるのであれば、ゴールド保有はとても理にかなった方策ですね。
さて、国にとっては理にかなうゴールド保有ですが、こと個人になると制約が待ち受けることになります。
ここからは、私達個人も適正なビットコイン保有量を考え、アクションを起こすべき時期に来ているのではないか?という考え方を書いてみたいと思います。