ビットコインの12年の歴史には、いくつかの記念日があります。
- 2008年10月31日: ビットコインホワイトペーパー公開日
サトシ・ナカモトが暗号学愛好家メーリングリストにホワイトペーパーを投稿した日。 - 2009年1月3日: ビットコインネットワーク始動日
Genesis Block Dayとして知られる最初のブロックがサトシによりマイニングされた日。数年前から、取引所などのカストディアンが顧客のビットコインを本当に100%保有しているかを検証するため、預けてあるビットコインを一斉に引き出すProof of Reserve Day(保有証明の日)にもなっています。 - 2009年1月12日: ビットコインが初めて送金された日
サトシがHal Finney氏に50ビットコインを送金した日で、これはサトシが行った唯一の送金であると考えられています。 - 2009年10月5日: ビットコインに初めて経済的価値がついた日
New Liberty Standardという取引所が1ビットコインを0.000994ドルで販売した日(価格はビットコイン発行に要する電気代を基に算出されたようです)。 - 2010年5月22日: ビットコインが初めて交換手段として使われた日
Laszlo Hanyecz氏が25ドル相当のピザに1万ビットコイン(1ビットコイン=0.0025ドル)を支払った日。ビットコイン・ピザ・デーとして、世界中のビットコイナーがピザを食べてお祝いする日になっています。 - 2020年8月11日: ビットコインが初めて企業の資本準備金として採用された日
Nasdaq上場企業Microstrategyが21,454ビットコインの購入を公表した日。
そして今週、新たな記念日が生まれました。
- 2021年9月7日: ビットコインが初めて国家の法定通貨になった日
エルサルバドルでビットコインを法定通貨と定める法律が施行された日。
まだ3日しか経過しておらず、現地の情報が不足かつ錯綜しているので全体像は不明瞭ですが、歴史的瞬間に立ち会えた興奮が冷めやらぬうち、そして記憶がフレッシュなうちに、9月7日前後の主な動きを時系列順に整理しておきたいと思います。
なお、エルサルバドルで法案が可決するまでの話は、2021/06/11付けのコラム「ビットコインは希望」をご参照ください。
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9月3日
UCA El Salvadorという大学がエルサルバドルの国民を対象に実施したアンケート結果が現地の新聞に掲載されました。
- BTCは信用できない 80%
- BTC採用で経済は… 好転する 17%、悪化する 43%
- BTC採用で物価が上がる 54%
- BTC採用で得をするのは… 富裕層 36%、外国人 22%
- 政府が提供するChivoウォレットを使うつもりはない 65%
- ビットコイン法は廃止すべき 68%
国民の多くがビットコインの法定通貨化を歓迎しておらず、経済にも悪影響の方が大きいと考えているようです。
これを裏付けるように、8月28日にはエルサルバドルのTwitterで“No al Bitcoin”(No to Bitcoin)がTrendingワードに浮上、首都サンサルバドルでは“No al Bitcoin”というプラカードを掲げた反対デモが開催されました。ただ、デモについてはビットコイン法の注目度の高さを利用した退役軍人の年金増額要求との情報もあり、真意は定かではありません。
断片的な情報を総合すると、法案成立から法律施行までの時間が3ヶ月と短く、政府が法案で約束したビットコインに関する教育が十分に提供できていないため、国民の不安感や疑問に向き合えていないことが根底にあるとの印象を受けました。
9月5日
300万人以上が参加するブラジルのRedditコミュニティで、エルサルバドルの英断と前途を祝して、ビットコイン法施行日に30ドル分のビットコインを買おう!という動きが活気づきます。
エルサルバドル政府はビットコイン利用を促すために国民に30ドル分のビットコインを配布すると宣言しており、配られたビットコインがドル建てで値上がりするのを目の当たりにすれば、懐疑的な国民もビットコインへの態度を軟化させるのでは?という意図だと推測します。
なぜ無関係のブラジルでこんな運動が起きたのか、背景は不明ですが、おそらく長年米国や先進国の都合に振り回されて経済的苦難を強いられてきた同じ中南米の国として、先進国やIMF、世銀を敵に回すリスクを冒してまで過去と決別し、より良い未来を手にするために一歩を踏み出したいという願いに共感を覚えたのではないでしょうか。