こんにちは。自民党の総裁選もおわり、ブロックチェーンを活用して地方の活性化を進めていこう!という呼びかけを見かけるようになりました。
コメントを見ていくと、ブロックチェーン・Web3などは見かけますが、ビットコインはどこにもないですね。トランプ大統領候補がビットコインを前面に押し出しているのとは対照的です。
当記事では、ビットコイン抜きのブロックチェーンは機能しないということを論じていきたいと思います。
もちろん、税制などを通じて暗号通貨に陽の光が当たることには賛成です。ここではコンセプト的なことにフォーカスして書いていることをご了承ください。
それでは始めましょう!
ビットコインのないブロックチェーンは存在意義がない
まず最初に、ブロックチェーンとビットコインの関係図を書いてみました。
一般的には、ブロックチェーン上で稼働する実例の一つがビットコインだと認識されています。
「ビットコインは投機でしかないけど、ブロックチェーンには未来があるよね」というようなコメントをよく目にしますね。
もともとブロックチェーンの核心は、情報のコピーが0コストでできるWeb上でも、銀行などの中央集権的な組織を通さず、二重支払いのない取引を可能にした点にあります。
Proof of Work (POW) という費用が発生するシステムを使うことで、データ改ざんを費用面で見合わなくし、不正の動機を消し去っているのです。
なぜ世の中で改ざんが起きるかといえば、単純に「改ざんコストのほうが得られる利益より小さい」からです。
ブロックチェーンは、これを逆手に取ったシステムなのです。
ブロックチェーンが機能する理由は、「改ざんコストのほうが得られる利益より大きい」から
たとえば企業を経営している人がいたとしましょう。
「新商品の発表直前だけど、業界で決められているテストで基準値を超えるためには追加で3,000万円の新規投資が必要なんだよな。でも眼の前のテスト機を少し改ざんするだけなら3万円でできてしまう...」
このような状況に直面したら、どう思うでしょう?さらに以下のような周辺環境があるなら?
- もし当局にバレたとしても罰金が50万円だけだったら?
- 同業他社の動向を見る限りバレる期待値は10%程度。
- 上場をしているわけでもないから、株価の下落もさほど心配しないですむ。
- 新商品がどれだけ売れるかは全くの未知数...
- 来月には、1,000万円の支払いが待ち構えている。
- この状況下で銀行は追加担保を出せと言ってきている。
改ざんコスト期待値は8万円(機器3万円+罰金期待値5万円)であるのに対して、新規投資をするなら3,000万円の手出しが必要。手元資金もないどころか追加担保が必要で、そして売れる金額も見通しが立たない。。。
3,000万円を逃れるためのコストが8万円、375分の1ですか。うーん、改ざんは「悪い」ってわかっちゃいるけど、でもね!
これが改ざんの動機になるわけです。
ではこれが逆になったらどうでしょう、つまり改ざんコストが3000万円で得られる利益の期待値が8万円しかない状態だったとしたら?
絶対に改ざんしないですよね。これがブロックチェーンが機能する理由なのです。
ビットコインの改ざんコストを計算してみる
ではここからは、仮にビットコインのブロックチェーンを改ざんし、ビットコインを搾取することができたとして、その必要コストを試算してみましょう。
ものすごく単純化して考えるなら、これを可能にするためにはビットコインのPowマイニング市場シェア5割以上を手中に収める必要があります。
試算でしかないですが、2023年6月時点で、アメリカの上場ビットコインマイニング企業14社の時価総額は約228億ドル(約3.4兆円)に達しています。
JPモルガンの調査報告書によると、これらの企業は世界のビットコイン・ハッシュレートの約23.8%を占めているそうです。(参考記事はこちら)
この情報を基に単純計算すると、世界全体のマイニング機器の時価総額は、アメリカの上場企業の約4倍、つまり900億ドル以上(約13.3兆円以上)と推定できます。