中央集権とセルフカストディの良いところ取りで安全を確保するベストプラクティス
こんにちは!ビットコインをはじめとする暗号通貨を保有している方の中で、貸金庫を使った自前カストディを実行されている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
当記事では、三菱 UFJ 銀行の元行員による貸金庫内の資産窃盗を振り返りつつ、貸金庫を含めた暗号通貨の保管方法を、今一度振り返ってみたいと思います。
偶然か必然か? サトシの予言と日本最大手銀行の窃盗事件が重なった日
2024年10月31日。この日はサトシ・ナカモトが「中央集権の信頼に依存しない電子取引システム;ビットコイン」を世界にホワイトペーパーとして提案してから、ちょうど16年目の記念日でした。
皮肉にも、まさにこの同じ日に、国内銀行で最大手の三菱UFJ銀行で、元行員による貸金庫からの資産窃盗という信頼を裏切る事件が発覚します。
中央集権的な金融機関への「信頼」を必要としない新しい金融システムが生まれた日と、まさにその「信頼」が揺らぐ事件が、16年の時を超えて同じ日に起きたという歴史の不思議な巡り合わせ。
この偶然は、私たちに何を語りかけているのでしょうか。
またビットコインを始めとする暗号資産の保管に銀行の貸金庫を使っている場合、どのような対策を講じればよいのでしょう?
当記事で少し深掘りをしてみたいと思います。
なぜ銀行は内部犯罪に弱いのか - PwC調査が明かす「換金コスト」という落とし穴
まず金融機関による不正行為が、どの程度の頻度で起きているのかを確認をしておきましょう。
PwCは2014年に経済犯罪実態調査を実施し、95カ国以上から5,128の回答を得ています。このなかで金融業界は被害にあった比率が45%となり、ほかの分野よりも高くなっていることが特徴的です。
被害の内訳をみると、金融業界で最も多い経済犯罪は、「資産の横領」であることがわかります(注:あくまで調査対象の全体像なので、日本の金融機関・・・というわけではありません!)
では、金融業界における「資産の横領」が頻発するのでしょうか?この理由として、レポートでは以下が挙げられています:
- 金融機関が現金を取り扱う機関であること
- 不正行為者にとって資産横領は換金コストの低い犯罪であること
ここでいう「換金コストの低い犯罪」とは、盗んだものを現金化(換金)する手間やリスクが少ない犯罪という意味です。
金融機関は現金そのものを扱う業務が中心ですから、その「現金」を摂取してしまえば、もはや換金する必要がないわけですね。
これが窃盗対象が証券や商品・クレジットカード情報などだと、転売したり現金化の過程で追跡されるリスクがあります。
このため、金融機関での資産横領(特に現金)は犯罪者にとって「効率的」な犯罪として狙われやすいんですね。
またその他の特徴として、内部者(行員等)による犯行が多いこと、比較的若い社員から中間管理職による不正が多いことなどが挙げられています。
過去にも日本では、2007年に三井住友銀行の横浜駅前支店で、行員が約4億円を横領した事件もありました。こちらは貸金庫ではなく、預かり証を不正利用して着服したようですね。
参考:元社員の不祥事件に関する調査状況等のお知らせ (三井住友トラスト・ホールディングス株式会社)
これらから分かることとしては、以下のようなポイントです。
- 現金を扱う組織は内部犯罪のモチベーションが高くなりがち
- なぜなら現金は換金する必要がなく換金コストが低いから
私たちは大手の金融機関であれば安心と思いがちです。
ですが実態としては、大手になるほど取り扱う金額が大きくなります。目の前を換金コストが低い現金が流れているため、働いている人は常に横領のモチベーションと戦わざるを得ない状況にいると、考えた方が良いのかもしれません。
サトシはビットコインを作るにあたり、誰も信用せずとも機能が回り続ける設計を行いました。
筆者にとっては、記念すべきビットコインの創立日に、このような犯罪が起きたことに、何か象徴的な意味を感じざるを得ませんでした。
ビットコインの保管に貸金庫を使っている場合のベストプラクティス
ではここからは、ビットコインを貸金庫に預けている人が、どのような対策を講じていけば良いのか、そのベストプラクティスを考えていきましょう。