ビットコインに本質的な価値はないと手垢のついた言葉をみるたび、「じゃあなんで値段がついて取引されてんだよ?」と疑問に思われたことがある方、今しばらくお付き合いください。
当記事では、少しだけ通貨の歴史を振り返りつつ、なぜいまビットコインが法定通貨よりも価値を高めているのか(つまり値が上昇傾向にあるのか)を考えてみたいと思います。
法定通貨の本質は自国発行トークン
まず私たちがもっとも目にする日本円などの法定通貨を軽く振り返っておきましょう。
もともと人類が蓄積してきた富を交換するため、一時的な「媒体」として使われてきたのが通貨。その形態は、貝殻・ガラス玉・金・たばこなど、時代の背景と環境によって自然発生的に決まってきました。
特定の時代と場所で”入手困難であること”を理由に通貨として使われた媒体。それらは、技術革新や外部から「別の通貨」が大量に流入することで価値が希釈化され、その地位を失ってきました。
このあたりは、書籍「ビットコイン・スタンダード:お金が変わると世界が変わる」に詳しいです。翻訳者は筋金入りのビットコイナーである練木さんですから、日本語でもパワーが減衰していない希有な書籍です。
さて私たちが今使っている法定通貨は、1971年のアフター・ニクソンショック。つまり「金との交換保証がなくなってしまった」通貨です。
では今の法定通貨(円やドル)が何に価値を依存しているのでしょうか?日銀に聞いてみました(いえ、すでにFAQで掲載されていました)
銀行券は、日本銀行が信認を確保しなければならない「債務証書」のようなものである
https://www.boj.or.jp/about/education/oshiete/outline/a23.htm
つまり銀行券の価値は、発行国の信用次第ということになります。
でも自国が発行した銀行券も、貿易する相手国が受けいれてくれないと意味がありません。このあたり、現イタリア首相メローニ氏のスピーチが生々しく参考になります。
https://www.youtube.com/watch?v=-NBf1C4YMNw&t=11s
以下、ポイントだけ翻訳してみます。
これはCFAフラン、フランスが14のアフリカ諸国に印刷した植民地通貨だ。
自国の通貨発行権を使い、それらの国々の資源を搾取するために作られたものである。
この写真はブルキナファソ(サハラ砂漠の南に位置する内陸国)の金鉱脈で働く子供の写真だ。同国は世界最貧民国の一つだ。
フランスは植民地通貨を印刷し、金鉱脈を抱えるブルキナファソへ持ち込んだ。
引き換えに、フランスはブルキナファソが輸出するすべてのものの半分を要請し、それらはフランスの歳入局に行き着いている。
子供がトンネルをくぐって採掘したゴールドは、ほとんどがフランスの金庫に収まっているのだ。
解決方法は、アフリカをヨーロッパに吸収することではない。アフリカを搾取するヨーロッパの特定諸国から自由にすることだ。
そして彼らが保有している財産で、ちゃんと生きていけることを許すことだ。
なまなましいですね。
有り体にいえば、軍事力を背景に自国通貨を受け入れさせ資源を搾取。支払いに使う自国通貨は自国都合で発行する。一方で資源と引き換えに”通貨”を手にした側は、価値の減耗で貧しくなるのみ。
資源を通貨で搾取される側から見れば、法定通貨とは軍事力を背景にした自国発行トークンにしか映らないでしょう。
少し話がそれました。
冒頭、通貨は ”入手困難であること” を背景に移り変わってきたことを紹介しました。では、ビットコインが生まれた2009年以降、入手困難の度合いが劇的に変化したものとは何でしょう?
このあたりを掘り下げていくと、法定通貨からビットコインへ価値が流出している現状を理解することができるかもしれません。
ビットコインのフェアバリュー(適正価格)
さてビットコインのフェアバリュー(適正価格)は、どのようにして求めれば良いのでしょう?
2023年2月、FEDリサーチが「ビットコインはマクロに連動しない」という論文を発表しました。https://www.newyorkfed.org/research/staff_reports/sr1052
- ビットコインに本質的な価値はない
- 将来の値上がり期待からディスカウント率を逆算で試算
- 結局のところ、スペキュレーションで決まるだけ
バックテストもビットコインと他資産とを違う期間で比べてみたり、はっきりいって落胆しました。もうちょっと発見のある記事を出せよと。
そもそもビットコインは、中央集権が無能な金融機関の救済に血税を無制限に流し込む持続不可能な無理ゲーを見て、Satoshiが考案した新しい通貨システムです。
そのフェアバリューを求めるなら、新しい切り口が必要だと思い出したのが、下の記事です。
「一物多価」の経済実現へ デジタル金融の実相
成田悠輔・エール大学助教授
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD206RD0Q2A021C2000000/
○ 情報革命で記録としての貨幣価値下がる
○ 経済履歴データで価格が多元化・個人化
貿易などの越境取引では、多様な取引相手の信用をいちいち調べて受け渡しすることも不効率。でも相手が信用をまとった通貨を渡してくれるなら、どんな相手だろうと取引は成立する。
お金へのニーズは、情報の不足を補う過程で爆発的に上昇。逆にデジタル化が進むいま、お金へのニーズは減少する時期に入っているという説です。
この仮説、ビットコインにストレートに当てはまっています。少し詳細を見ていきましょう。
26%の情報料 ~ 法定通貨からビットコインへの流出は歴史的な必然
もし「お金」の価値が世の中で流通する情報と反比例して減少するなら、その情報量を探せば何かのヒントが得られるかもしれません。そこで