ジョン・マカフィー氏と聞いて「パンプ&ダンプ」を連想する方は、暗号通貨での経験が長い方だと思います。同氏(2021年に死去)はツイッターの知名度を利用し、特定の暗号資産の価格をつり上げて売り抜ける相場操縦で知られていました。
規制が強化され続けた今、目立つ「パンプ&ダンプ」は減った印象があります。しかしChainalysisによると、2022年に調査対象となった新規トークンのうち24%が、ローンチ後1週間以内に90%以上下落しているとのこと。見えなくなっただけで、規模は依然大きいのです。
24% of New Tokens Launched in 2022 Bear On-Chain Characteristics of Pump and Dump Schemes
さらに、今の時代背景から予想されるのは、従来のそれとは次元の異なる高度な「パンプ&ダンプ」の誕生です。
当記事では、そうした新たな手口から身を守る基本的な心構えを考えていきたいと思います。
人間の心は時間がたつと買いあおりを受け入れてしまう
私を含め多くの人は、相場操縦になんて引っかからないと思っています。ところが私たちの認知能力は、思った以上に買いあおりに対しては弱いと認識しておく必要がありそうです。
時間が経過すると、人は情報源の信頼性よりもメッセージ内容を重視しがちになります。これは「スリーパー効果」と呼ばれる心理的バイアスの一つです。
私たちの脳は、感情と情報とを別の部位で処理するように出来ています。
「このコインで儲かる」という感情に対し、「○○から出た話だから怪しい」という情報が最初はバランスしていても、時間が経過すると「儲かる」感情だけが残ってしまうということですね。
インフルエンサーは人工知能に置き換えられる
さて冒頭のジョン・マカフィー氏に戻ります。同氏が買いあおり活動を開始したのは2017年でした。
参考記事:ジョン・マカフィーは、こうして仮想通貨にまつわる詐欺で起訴された
これは時代背景を考えると、とても理にかなったタイミングだったと言えます。
下のグラフは、2013年~2023年までのSNS利用者数の成長率を比較したものです。
2017年・・・SNS利用者数が前年比で最大の伸び率
2023年・・・SNS利用者数が前年比で最小の伸び率
マカフィー氏の活動を支えたのは、2017年がSNS利用者の最大増加期であったことも背景の一つだと分かります。
さらにツイッターで表示された80%の投稿は、フォロワー数上位アカウント0.1%によるものだったとのこと。(※Nature Communications調べ)
SNSの情勢をまとめると、、、
① 2017年は最大の成長期
② 0.1%の著名人がアテンションを総取り
マカフィー氏は、もっとも勢いのある場所で、自らの知名度を最大限にレバレッジできる方法を見つけたということができそうです。
これに対して今、2023年を見ると対照的な状況に置かれていることが分かります。SNSの利用者数は前年比で3%の伸び率しかありません。2017年の21%と比べると、伸び率はわずか1/7に留まります。