さて、昨日ビットコインカンファレンス in Miamiで発表されたエルサルバドルのニュースで盛り上がっていましたね。エルサルバドルという南米の小国がビットコインを法定通貨に加える予定、という発表があり、素晴らしい動きだ、という意見から、何の意味もないただのパフォーマンスという意見まで様々な声が出ています。
自分もこの件についてはまだ考え途中の部分もあるのと、もう少し情報が出てくるのを待つ必要があるとは思いますが、今の時点での所感をビットコイン研究所にて書き殴っておきます。ビットコインのニュース以前に、そもそもエルサルバドルという国は自国通貨を20年ほど前に捨て、ドルを正式に流通させるという「Dollarization」ということをやっていた面白い国で、この政策の結果や是非などだけでも面白い話だと思うのですが、そういう話もおいおいしていこうと思います。
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まず自分の第一印象は「面白い」でしたが、同時にエルサルバドルの経済状況や、またビットコインをどのように組み込んで行くのかの詳細が見えないので、「面白いけど、どうなんだろう、本当に効果があるのだろうか?」という6割ポジティブ、4割疑問くらいのミックスでした。同じような印象をもった人も多いのではないでしょうか。
まず今回のニュースですでにわかっていることとして、ビットコインがエルサルバドルで法定通貨として認められれば、ビットコインの取引や支払いでの課税はなくなるということです。これはすでに大統領自身から発言されており、特に決済手段として地味に重要なポイントですね(日本とかだとこの税制や含み益課税がどうにかならないと、そもそもビットコインを決済手段として広く使われるのは永遠にないんじゃないかとすら思います)
また、今回の動きを支援するパートナー企業として、StrikeとBlockstreamがあげられています。Blockstreamはご存知ビットコインのコア開発やマイニング、またビットコインを利用したサイドチェーンのLiquidを開発しているインフラ企業です。
一方、StrikeはLightning Networkを利用した送金サービスで、単純なビットコインペイメントだけではなく、銀行口座などと連携させることで、保有しているドルをLightningのペイメントレールを利用して世界中どこでも送れる、みたいなコンセプトのサービスを開発しています。そして、これは自分も知らなかったのですが、今回の発表前にStrikeはすでにエルサルバドルで自然発生的に人気になっていたようで、国内のAppstoreで最もダウンロードされたアプリになっていたらしいです(裏が取れてないんですが、メディアの記事などでも紹介されていた)
これはStrikeを使うことで、出稼ぎに行っていたエルサルバドル人が国の家族にドルで国際送金する、というような用途が多かったのではないかと推測できます。
また、エルサルバドルの通貨は米ドルなので、Lightningを利用して送られたドルはそのまま現地の他のStrikeユーザーと送りあったりも比較的簡単に出来るはずですね。また、並行してビットコインの法定通貨化と合わせてビットコイン関連企業や起業家の誘致などもやっていくと発言がありました。
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さて、上記のように税金免除、Strikeなどを通してLightningを直接的、間接的に使う、企業誘致などはわかっていますが、詳細はまだ具体的にわかってない部分が多いと言えそうです。
まず、国の正式な法定通貨として認めると行った時に、どこまでビットコインの利用を徹底するのか、また国のReserveとしてビットコインをどれくらい持つつもりなのか。例えば法定通貨として認めると行っても、おそらくすぐに国民に利用を徹底/強制するとかではないでしょう。単純に発表して注目されたいだけで、その後特に施策として手を打っていかなければ、国民がすぐに慣れていて、一般的により信用のあるドルを手放して、ビットコインを使い始めるのは流石に難しいと思います。
また、今回エルサルバドルがかなり先進的な事例としてビットコイン政策を発表しましたが、エルサルバドルはそもそもGDPが3兆円以下の日本の100分の一にも満たない比較的小さな国なので、今回の発表を受けてもマーケット的にも影響は今の所ほとんどありませんでした(むしろ価格が少し落ちたくらい)
その点でも今回の発表は果たして何か長期的に意味のある重要な動きと言えるかと言われると懐疑的な見方が強いのも納得できます。同時に、自分は今回のニュースが総合的に見るとビットコインにとって重要な動きであると見ています。
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