1月の恒例行事である共通テストも終わり、受験生にとっては今からが最終コーナーですね。こればかりは最後の結果が出るまで、本人も家族も心(と体と財布)が休まりません。
我が家の娘も2月の大学受験に向け、あちらこちらに出願をしています。申し込みボタンをクリックするたびにチャリンチャリンと出ていく試験代金の音は、なんと痛痒いことか。
就職氷河期世代の同胞にお伝えしたいことは、子供の教育費には相続税がかかりませんから、使えるだけ使っておきましょう・・・という自らを慰める言葉です。イタタ
さて試験の問題では記憶を試される内容も多々あるわけですが、それもそのはず、私たち人間は忘れることを生業にしているようです。
今回の記事では、強烈なインフレ(物価が急騰売ること)が起きる理由は、その周期が私たちの記憶能力を超えているから・・・ということを書いてみたいと思います。
寿命を100倍にするしかない
「天災は忘れた頃にやってくる」とは、地震や火災などの研究を重ねた寺田寅彦氏です。彼は災害を防ぐ方法について聞かれ、以下のように述べています。
こういう災害を防ぐには、人間の寿命を十倍か百倍に延ばすか、ただしは地震津浪の週期を十分の一か百分の一に縮めるかすればよい。そうすれば災害はもはや災害でなく五風十雨の亜類となってしまうであろう。しかしそれが出来ない相談であるとすれば、残る唯一の方法は人間がもう少し過去の記録を忘れないように努力するより外はないであろう。
つまり災害への対策がおろそかになる理由は、人間が忘れてしまうことだと言い切ったわけですね。
たしかに寿命が300年くらいになれば、100年に一回の災害も自分自身の記憶として残すこともできるのでしょう。忘れっぽい筆者は自信がありませんが。
さて、この「忘れたころにやってくる」に関して言えば、インフレも地震と似たところがあります。
地震は毎日起きるわけではありませんが、日々私たちには見えていない地下でプレートのゆがみを蓄積しています。で、それが閾値を超えたときに「地震」として姿を現します。
同じように、インフレの原因も、毎日足元で進行しています。ですが、災害レベルのインフレは、ひずみを何十年か貯めてから、一気に来るんですよね。少し日本の過去を振り返っておきましょう。
日本は1946年にデフォルトしている
少し前に目にすることが多かったMMT理論の主張は、日本は自国で通貨を発行することができるため、財政破綻(デフォルト)をすることはないというものです。
一方で、カナダと英国中銀が1960-2022年の政府財政破綻を分類した研究の中では、日本は事実上のデフォルト国に分類されています。
終戦後の1946年に行われた新円切り替えは、旧通貨を不利な条件で新通貨に交換する通貨改革であり、これがデフォルトに含められたからです。
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参考;新円切り替えとは?
第二次大戦後の日本では、戦時中の金融政策で物価が高騰していた。そこで政府は46年、1円を1新円に切り替える通貨改革を実施した。しかしレートは不利(軍票は1円=0.5新円など)で、預金も一時引き出しできなくなった。つまり国民の資産の一部を政府が強制的に失わせる形となった。(人工知能まとめ)
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表向きはデフォルトじゃないけれど、実態はデフォルトということですね。
このあたり、日経新聞の「財政の持続可能性を考える(2) 日本もデフォルトを経験」(駒沢大学准教授の江口允崇氏寄稿)に詳しいです。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD192EN0Z11C23A0000000/
デフォルトにしろ、そうでないにしろ、日本の円は引き続き使われています。そこで日本の物価指数が戦前から今まで、どのように移り変わってきたかを見ておきましょう。
ここからは、日本銀行が集計をしてくれている「戦前基準指数」を使ってみます。なんと1901年から2022年までの連続指標を公表してくれています。日銀、いい仕事しています!
昭和40年の1万円を、今のお金に換算するとどの位になりますか?(教えて!にちぎん)
https://www.boj.or.jp/about/education/oshiete/history/j12.htm
これによれば、1901年当時は0.469だった物価は、100年後の2001年に658.0まで上昇をしています。
なんだか、とんでもないインフレにも思えますが、年率に換算すれば、たった7.515%です。
試しに、0.469を年率7.515%のインフレ率で100年間維持した場合の数字はこちら。
↑Google計算機から
複利のインパクトは半端ないですね。
少し視覚的に見るため、日銀の企業物価指数に、前年インフレ率を載せたグラフを作ってみました。
実は足元2022年の企業物価指数、前年比で17%超の上昇になっているんですね。インフレしてますやん!