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こんにちは,AndGoのハードウェア担当です。
マイニングマシンは消費した分の電力はほぼ全てが熱として捨てられています。この熱が有効活用できないだろうか?と考える方はおおくいらっしゃるのではないでしょうか。
実際にマイニングマシンを使った暖房器具も世の中には製品としてあるようです。今回はエネルギーと熱について少し踏み込んだ解説をし、マイニングマシンを使った暖房器具や、排熱の有効利用について考察してみました。
マイニングマシンを使った暖房器具?
マイニングマシンはハッシュ計算をするときに大量の排熱が出ます。ASICでもFPGAでも、半導体による集積回路をつかって計算している限り、計算するたびに半導体の中を電子が流れます。電子を移動させるためには電力が必要で、その電力は最終的には熱になるため、計算と排熱は切っても切り離せない関係にあります。さらに、理論的にも情報操作と発生する熱は密接的に関係しているという面白い話も実はあります(まだその限界には遠く及ばないですが…)。
ASICなどの半導体チップは自身の熱で壊れてしまわないように、巨大なヒートシンク(下の写真はパソコンのCPUのヒートシンクの例)とファンによってわざわざ冷却しています。このとき出てくる排熱を有効利用することはできないのでしょうか。例えば消費電力1000Wのマイニングマシンであれば、きっかり1000Wの熱が出てきます。1000Wといえばドライヤーと同じ消費電力ですのでかなり大きな熱を出すことが想像されます。

実際にマイニングしながら部屋の空気を温めるヒーターが発売されているようです。
https://internetcom.jp/204474/qarnot-crypto-heater-qc-1
https://bitcoinminingheater.com/
この中でBitHeaterはPro($3499)とTower($8900)というラインナップがあり、Proは1500W、Towerの方は4500Wの熱を出します。150
0Wは一般的な住宅の100Vのコンセントに接続できる機器の消費電力としてはほとんど限界値です。ドライヤーの定格消費電力が1000W程度になっているのもそのような理由です。もし、4500WのTowerの方を仮に日本で使うとすれば200Vの電源が必要になるでしょう。IHクッキングヒーターや大型のエアコンなども200V系を使っています。製品ページを見る限りなんとも良さそうな感じに見えますが実際にはどうでしょうか。
熱の「量」について
1000Wの熱をマイニングマシンから出すとして、その量について評価してみたいと思います。1000Wの「W」は単位時間あたり消費するエネルギーという意味になります。数字が大きければその分、一度に消費するエネルギーが大きくなります。パワーと言っても良いでしょう。電子レンジも300Wと600Wの出力で比較すると単純計算では600Wのほうが半分の時間で食品を温めることができます。1000Wだと数字が大きくなるので1kWと表現することもあります。
そしてもし1kWの消費電力を1時間継続すると1kWhとなり単位が「kWh」になります。電力量といいパワーではなくエネルギーの単位になります。電気料金も電力量で請求され、日本であれば1kWhあたり25円程度です。WやkWで表される電力と、kWhなどで表される電力量は混同されることが多く、マイニングマシンを含めカタログスペックの表記でも時折間違えているものを見かけます。
1000W (=1kW)のマイニングマシンを1時間動かした場合は消費電力量は1kWhとなります。それでは1kWhでどのくらいの熱が得られるでしょうか。
例えば常温25℃の水であれば10Lをほぼ100℃程度まで温度を上昇させることができます。10Lの水といえば10kgの重量ですので相当なエネルギーのように思えます。
熱の「質」について
部屋の空気を温めることに使う場合にはどうでしょうか?空気そのものは比熱が小さいのですぐに温まるのですが、実際には空気だけでなく、部屋の壁や家具なども同時に温めなければ、すぐに部屋の温度は冷えてしまいます。家の断熱性もかなり大きく影響してきます。一般的な住宅であれば8畳程度の広さの場合には1kWhの電力量で2〜3℃程度しか温められないはずです(100℃のお湯を10L部屋においておいて、部屋がどの程度温まるか想像してみるとよいでしょう。)
また排熱の「温度」も重要です。これは奥の深い話で、例えば環境温度が25℃だとして、40℃の熱源と、その半分の量の55℃の熱源があったとします。エネルギーの観点から見ると、前者は+15℃で後者は+30℃で半分の量なので、25℃を基準とすれば持っているエネルギーの「量」としては変わりませんが、「質」の面で全然変わってきます。
熱は温度が高ければ高いほど利用価値が高いといえます。まず温度が高ければその分様々なことに使えます。45℃ですと、温水にしかなりませんが、500℃程度であれば物を燃焼させることができますし、1500℃になれば発電に利用することもできます。
また、温度が低いと、熱を伝えるのに非常に多くの時間がかかります。エアコンの蓋をあけるとフィンがが見えます。暖房の設定温度を18℃にしたとしても、このフィンの温度はそれ以上に高く50℃程度になっています。もし仮にフィンの温度も設定温度の18℃にしてしまうと、部屋はなかなか温まらないでしょう。
マイニングマシンを使った暖房の実際は・・・?
ASICなど一般的な計算に用いる半導体チップは80℃〜100℃程度で正常動作します。半導体チップは温度が高くなると抵抗が下がり、特性が変わってしまいますし、周辺の部品などが熱で壊れてしまうため、この温度以下で運用する必要があります。先程も述べたようにASICはヒートシンクで冷却をしていますが、ASICの内部は80℃以上になっていても、ヒートシンクの表面では40℃程度になってしまいます。したがって、マイニングマシンから得られる熱も最大でも40℃程度となります。
もちろん消費電力に相当するエネルギーの熱は出てくるものの、40℃程度の熱というのは質が高いとはいえず、やはりせいぜい暖房ぐらいにしか使えません。しかも生暖かい空気が出てくるぐらいで、部屋全体の温度を上げるのには非常に時間がかかるため、寒い日の朝に部屋を一気に温めるという使い方は難しいでしょう。
もちろん、100℃程度まで耐えられるようなチップを使えば、もしかしてお湯を沸かせそうな気がしてきますが、これも現実的ではありません。十分な速度で水を暖めるためには100℃より遥かに高い温度の熱源が必要です。ガスコンロの炎は1800℃程度ですし、IHも空焚き防止の安全装置がついていなければあっという間にヤカンが溶けるぐらいの温度になります。したがって、100℃をちょっと超えたぐらいでは、さっとお湯を沸かすという使い方は難しいでしょう。
マイニングマシンの排熱のおすすめの利用方法とまとめ
これらを総合して個人的にマイニングマシンの排熱の利用方法としてのオススメは以下の2つだと思っています。
1つ目は断熱性の高い建物での床暖房としての利用です。熱源の温度が低い場合には、一気に暖めるという使い方は現実的ではありません。電気ストーブや薪ストーブのように熱源の温度が非常に高い場合には輻射熱によって体温を上げることもできますが、40℃程度の熱源ではそれは期待できません。
もし部屋の断熱性がよければ、40℃程度の熱源でも部屋全体を十分に温めることができます。このような使い方をする場合には暖房は連続運転のほうが効率が良くなりますので、常に稼働させたいマイニングマシンとの相性は良いでしょう。
また、床暖房は直接肌にふれる暖房ですので、そもそも高温にしなくても効率よく体温を温めることができます。(そういう意味では電気ひざ掛けがオススメです。)
2つ目の利用方法は寒冷地での熱源としての利用です。熱源の温度が40℃だったとしても、環境温度が低ければ、相対的に熱の質が高くなります。暖房の補助に使えるようになるかもしれませんし、工業的な利用価値もでてきそうです。
今回はマイニングマシンを有効活用するという意味で排熱利用について考察してみました。熱の利用はローテクなようで、しっかりと検討しないと、想定した効果が得られないということになりがちです。現在、世界中で非常に多くの電力を使ってマイニングしていることは事実ですので、消費電力を少しでも有効活用したいものです。